ジェーン・スー「『いいね』の数にこだわらない。他者に自分の価値判断を預けない」50代になって理解できた「インディペンデント」な自分でいること《インタビュー》
公開日:2025/2/21

ジェーン・スーさんの新刊『へこたれてなんかいられない』(中央公論新社)。雑誌『婦人公論』の連載からの書籍化は、『これでもいいのだ』に続く2冊目。同世代のみならず、あらゆる世代の人に力をくれるエッセイだ。発売即日重版が決定したという本作について、ジェーン・スーさんにお話をうかがいました。

――本書の中で、50代になった今、〈時間的、精神的余裕はないが、朗らかな定年から生まれた心の余白がある。〉〈余白があるとインディペンデントな存在でいられる。〉と書かれていたのが印象的でした。
ジェーン・スーさん(以下、スー) 〈私にとってインディペンデントとは、自分らしくいられることを最優先できる状態〉とも書きましたが、それってすなわち、他者に自分の価値判断を預けないということでもあるんですよ。近年のわかりやすい例でいえば、「いいね」の数にこだわらない。相手の気分や時代の流れで変わってしまう基準に、自分の評価をつなげてしまうと、どうしたってブレてしまう。自分の価値は、自分で決める。昔から先人たちが言い続けてきたことの意味が、50代になってようやく、頭ではなく経験を通じて理解できた気がします。

――それは〈守るに値するものは、プライドよりディグニティ〉という話にも通じるものがありました。プライドを守ろうとするとき、そこには必ず他者の存在がある。それよりも、己の内面でのみ培われる誇りや尊厳、品位のほうが大事だと。
スー ずっと、プライドという言葉の使われ方に、違和感があったんですよね。守らなきゃいけないと誰もが言うのに、持ちすぎるのもよくないと言われる。何故なんだろう、と考えたら、プライドは懸けて戦われるもの、つまり他者と奪い合うものだからなんじゃないかと思いました。プライドは、誰かとの比較のなかでしか保つことができない。それよりも、誰と闘わなくても保たれる自尊感情、ディグニティのほうを重視したほうがいいのではないかと。
――しかもプライドは、安定して満ちるということがないですよね。すぐ不安になって、誰かを貶めたり、虚勢を張ったりしてしまう。
スー どれだけ、他人に「いいね」と言ってもらえるか。お金を稼いで、他人にすごいと思ってもらえるか。そのための努力は、結局、他人の欲望を自分のなかに詰め込むことにしかなりません。それじゃあ、いつまでたっても心は満ちませんよね。だけど、誰がなんと言おうと自分はこれが好きなんだ、と思えるものを集めていけば、たとえ自分の内側が100%満たされなくても、満足できる。むしろ余白があるほうが、のびしろとなってどんどん広がっていける。そういう強さを年齢とともに、少しずつ身につけていかなきゃいけないんだろうなと思います。