おばあさん猫とひとりぼっちの女の子。誰かの幸せを願う尊さにあふれる、“猫愛”たっぷり絵本『みまもりねこ』【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/2/22

みまもりねこ村山早紀:著、坂口友佳子:絵/ポプラ社

 猫を題材にした絵本や児童文学は、大人でも涙してしまう作品が多い。絵本『みまもりねこ』(村山早紀:著、坂口友佳子:絵/ポプラ社)も、そんな一冊だ。

 本作は猫を愛して止まない児童文学作家の村山早紀さんが生み出した、優しい猫物語。イラストは、温かみのある柔らかな絵を多数描いている、猫好きイラストレーターの坂口友佳子さんが手掛けた。

 猫好きコンビによって誕生した本作。小さな子どもはもちろん、大人でも読みごたえがあり、読後は心がポカポカになる。

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 主人公は小さな公園に住んでいる、1匹のおばあさん猫。猫は公園へやってくる町の人にかわいがられ、穏やかな日々を過ごしていた。

 人々が寝静まってひとりになると、お気に入りのベンチの上で毛布の温もりを感じながら夜を越すのが猫の日課。空に光る星を見ても、幸せな日々を送る猫は“願いたいこと”などなかった。

 しかし、心境が変わる出来事が起きる。ある日、猫は寂しそうな様子の女の子と出会う。女の子は毎日、猫を撫でに公園へ来るように。泣きながら、猫の隣に座る日もあった。

 人語が話せない猫はひたすら女の子に寄り添い、彼女が公園のそばにあるピアノを弾く時には、耳を傾け続けた。

女の子は、ねこよりもおおきいのに、どこか、しんでしまった、こねこににていました。ねこは、もういないこねこをあたためるような気持ちで、女の子のそばにいたのです。(p.20)

 だが、優しい日々は永遠には続かない。やがて、猫は自分に命の終わりが来たことを悟る。自分がいなくなったら、あの子はひとりぼっちになってしまう…。かつて、野良猫としてひとりぼっちの苦しさを味わった経験があった猫は心を痛め、真夜中の公園で星を見上げて生まれて初めての“お願いごと”をした。

 すると、猫の願いは叶えられ、女の子の日常や心境には変化が…。誰かを心から思うことはなんて尊いことなのだろうと改めて思わされる猫の“お願いごと”の温かさを、ぜひ本作を手に取り、噛みしめてほしい。

 なお、いち猫好きとして、本作はペットロスに苦しんでいる方の心に染みる作品でもあると感じた。愛猫のことが大切であればあるほど、当たり前に猫がそばにいてくれる日常が終わると、生きる気力を失ってしまうこともある。生前、どんなに愛を伝えていても「もっとできることがあったはず」と、死後はやり場のない後悔に押しつぶされそうにもなるものだ。

 だが、猫はそんな飼い主の後悔も含めて、亡き後も人間を愛す情の深い生き物だと思う。本作に登場する猫も、そうだ。死後も、猫は女の子の心に寄り添い続ける。彼女の幸せを祈り、暮らしぶりを見守り続ける姿は、なんとも健気で愛情深い。

 そうした猫の温かさに触れると、自分が見送った愛猫も「至らなかった」という後悔すら笑って受け止め、今も寄り添ってくれているのではないかと思えてくるはずだ。

 姿が見えず、撫でることができなくても、愛猫はきっと“みまもりねこ”としてそばにいてくれる。本作を手に取ると、そんな優しいあの子の温もりに触れたような気がして、涙が溢れることだろう。

 優しい愛猫の死を、どう受け止め、未来を生きていくか。そんな問いを投げかけられたような気もして、改めて小さな家族の見送り方を考えさせられた。

 心優しい1匹のみまもりねこ。その姿にあなたは誰を重ね、温かい涙を流すだろうか。

文=古川諭香

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