林真理子は連載42年目、古希を迎えても走る! 作家として、大学理事長として駆け抜ける日々を綴る人気エッセイ最新巻【書評】
PR 公開日:2025/3/13

作家・林真理子氏による週刊文春の人気連載「夜ふけのなわとび」。2020年には、「同一雑誌におけるエッセーの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定された長寿連載は、42年目に突入。これをまとめた36冊目の単行本が『マリコにもほどがある!』(林真理子/文藝春秋)だ。
本書には、2024年に執筆・掲載されたエッセイが収録されている。著者が、自身の母校である日本大学の理事長に就任してから2年半。理事長として働く日々や、仕事や旅行で訪れた先、またさまざまな人と過ごす時間で感じる喜びや怒り、疑問を、美しくユーモア溢れる言葉で率直に綴っている。コロナ禍や日大アメフト部をめぐる騒動を経て、出張や大学のイベントも再開。ますます忙しく駆け回る著者の毎日は、読者にとって刺激的で楽しい。
交友関係や知識、興味の幅が深く幅広い著者らしく、エッセイの話題も多彩。活力溢れる学生たちとの交流や、理事長職の合間に行う執筆活動などの著者自身のエピソードから、世間を騒がせた事件までさまざまだ。朝ドラ『虎に翼』の熱狂や、真美子夫人フィーバー、東京都知事選、トランプ銃撃事件など、2024年に私たちの心を揺らした出来事を、著者と一緒に楽しく振り返るような読書体験が得られる。
また、著者自身が古希を迎えたことへの感慨も読みごたえがある。著者は改めて、自分のやるべきことや、歳を重ねることについて考える。70歳、しかもレジェンド作家が語る仕事観や人生観というと説教じみて聞こえそうだが、そうした色が一切ないから不思議だ。それは、著者の真面目さや、読者とのフラットな目線によるところもあるだろう。しかしそれは何よりも、どんな話題であっても、傍観者として私見を述べるのではなく、自身の人生や考えに基づいたリアルな「実感」を真摯に語っているからではないか。幅広い年代とともに常に現場で働き、チャレンジを続けてきた著者だからこそ成し得る業だろう。
読者はすべての話題を、まるで著者と語り合っているかのようにリラックスしながら「自分ごと」として実感できる。著者は、小説でもエッセイでもずっとページをめくる「あなた」に向かって語りかけているのだと改めて感じる。
組織のトップとして働く同世代の女性たちや、さまざまな人生を選択してがんばっている女性たちに抱く著者の思いも胸に響く。熱く語るわけではないものの、エッセイのエピソードからは、未来を担う若い人たちのために奮闘してきた著者の人間愛と、未来への思いが感じられる。
と、ここまでいろいろ書いたものの、力を抜いて読めるのが本書の最大の魅力。ゆったりとした気持ちで読んでいる中で、著者の言葉にドキッとしたり笑ったりしながら、知っているはずの話題についての新しい示唆も得られて楽しい。作家・林真理子のファンはもちろん、1年があっという間に過ぎ去ってしまうと感じる人は、本シリーズを毎年、手にとって、1年を楽しく振り返ってみてはいかがだろうか。
文=川辺美希