未体験のおいしさ! コク深い甘辛さが魅力の「トマトチゲ」を作ってみた。予約のとれない韓国料理教室初のレシピ本【書評】
更新日:2025/3/6

野菜がたっぷり摂れて、独自の食文化があり多彩なメニューが楽しめる韓国料理。和食とはまた違った魅力を持つこうした料理は、近年の韓流ブームの影響もあってか近年大きな注目を集めている。筆者も辛いものが大好きなこともあり、キムチやチゲ鍋はよく食べるし、ピリ辛のタレをつけて食べるチヂミも大好物だ。でも、日常的に食べているとアレンジしたくなってくるのが人間というものではなかろうか。
『ヒャンミレシピーズ 予約のとれない韓国料理教室』(ゼン ヒャンミ/主婦の友社)は、韓国料理初心者はもちろん、アレンジを楽しみたい人にもぴったりのレシピ本。著者であるゼン ヒャンミさんは、なかなか予約のとれない東京・西荻窪の韓国料理教室「ヒャンミレシピーズ」の主宰者で、今人気の韓国料理研究家。初のレシピ本となる本書には、韓国薬膳や韓国宮廷料理をベースにした、和のテイストを取り入れた健康的なレシピが満載!
レシピを見てみると、「チゲ」や「チヂミ」「ナムル」などの定番メニューがバリエーション豊かにアレンジされ、基本レシピとともに紹介されている。なじみ深いとはいえ異国の料理となると、何となく「チゲはこういうもの」「チヂミはこういうもの」という固定観念に縛られがちだが、本書はそのイメージを覆し、料理の可能性の幅を広げてくれる。これは気になる……! そこで、その中から特に気になったものを2品作ってみることにした。

1つめは、トマトをたっぷりと使った「トマトチゲ」。鍋にごま油とねぎを入れて中火で炒め、コチュジャンと味噌、鶏もも肉、じゃがいも、玉ねぎ、粉唐辛子と砂糖を加えてさらに炒め、全体になじんだら出汁を注ぐ。あとはじゃがいもがやわらかくなったらすりおろしたにんにく、薄口醤油、魚醤、トマトを加えて煮込めば完成だ。最後にクレソンをのせる。
見た目から何となく洋風のシチューのようなものをイメージしてしまうが、味噌とコチュジャンのコク深い甘辛さがしっかりと効いていて、チゲとしての期待を裏切らない味。そのうえで、トマトの程よい酸味と甘さがより味に深みを与えていた。じゃがいもで程よいとろみもあって体が温まる、今の時期にぴったりのおかずに仕上がった。

2品めは、火を使わずに和えるだけで完成する「たくあんのナムル」。2mmの厚さに切ったたくあんと刻んだにらをボウルに入れ、ごま油、すり白ごま、あらびきの粉唐辛子を加えて混ぜ、なじませれば完成。
にらを生で和えるだけだとクセが強すぎるのでは?と不安もあったが、好奇心が勝って作ってみた。しかしたくあんが持つ甘みと酸味、ごま油やすりごまのこってり感が加わることで、にらの強いクセが程よく緩和されて驚くほどレベルの高い1品に。一口食べた瞬間、思わず「え、おいしい!」と声に出てしまった。たくあん自体の味も角が取れてまろやかになるので、特有の酸味があまり得意でない人にもぜひチャレンジしてほしい。
実際に作ってみると、なかなか予約がとれないのも納得の発見がたくさんあった。食材も調味料も普段から使っているものばかりなのに、少しアレンジするだけでこうも変わるのかと感心してしまう。このほかにも「塩チャプチェ」や「さきいかのキムチ」「小なすの水キムチ」など気になるレシピが多数掲載されている。中には、甘じょっぱさが魅力的な「韓国風トーストサンド」のようなギルティな1品も!


和食で「炊き込みご飯」や「お味噌汁」がアレンジ無限大なのと同じように、韓国料理も「キムチ」や「チゲ」など自由度の高いレシピの宝庫。筆者も、まずは本書のレシピをマスターして基礎を身につけ、もっといろんなアレンジ韓国料理に挑戦してみたくなった。
調理・文=月乃雫