40万部突破「はみがきれっしゃ」シリーズ、くぼまちこさんの最新作! 『パパじゃない?』は、親子愛を育むのにも最適な絵本だった【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/3/5

パパじゃない?川之上英子・健:作、くぼ まちこ:絵/KADOKAWA

 小さな子どもの反応が良い絵本の定番のひとつが、動物が出てくる絵本だ。

 まだ言葉が喋れない子どもでも、好きな動物が出てくればニコニコするし、少し喋れるようになると「ガオー!」「ブーブー」と鳴き声を真似しはじめる。バッチリ喋れる子なら「ライオンさん!」「ゾウさんだ!」と出てきた動物の名前を言い当てたりと、幅広い月齢の子どもが楽しめるのも特徴だ。

 そんな動物絵本の注目の新作が、40万部の大人気絵本「はみがきれっしゃ」シリーズ、くぼまちこさんの最新作『パパじゃない?』(川之上英子・健:作、くぼ まちこ:絵/KADOKAWA)だ。

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 お話は、ライオンの子どもがパパとはぐれて、迷子になるところから始まる。そして、泣き出しそうになった子どもを心配した他の動物たちが、「なかないで、パパだよ」とライオンのたてがみを身につけて、代わる代わる登場。しかしパパのフリをしていても、やけに鼻が長かったり首が長かったりして、「ゾウさんだ!」「キリンさんだ!」と毎回バレてしまう……というのが話の大筋だ。

 毎回「あれ、パパじゃない?」と少し不安になりつつも、いろんな動物さんに構ってもらううち、子どもライオンが次第にニコニコになっていく様子は、読んでいて微笑ましい。また子どもを心配して、自作のたてがみを被って登場する動物たちの健気さにも笑顔になってしまう絵本だ。

 実際に筆者も1歳6カ月の息子に読み聞かせてみたのだが、まずページをめくるたびに新しい動物が出てくるのに大喜び。ゴリラが出てくるページでは「ウホッホッホ」と言いながら笑顔で胸を叩いていた。

 一方で、他の動物がライオンのたてがみをつけているのは、なんだか不思議な様子。ゾウが出てくるページで、「はなが ながいのは だあれ……?」と質問形式の文章を読む形で問いかけてみたら、首を傾げながら手でゾウの鼻を作って真似していた。

 絵本の読み聞かせでは、子どもに質問をして、自分の頭で考えてもらうことが楽しんでもらうコツであり、なおかつ発育にもいい影響があるとされている。この絵本はそうやって「親が問いかけ、子どもが考えること」が自然と行えるのも非常に良い点だろう。

 また、この絵本は「ママ」ではなく「パパ」が主役なのもひとつの特徴。本作の推薦コメントには「パパのほうが積極的に読み聞かせをしてくれた」というお母さんからの言葉が複数あったが、「大好きなパパとはぐれた子どもがパパを探す」というストーリーは、やはりお父さんがグッとくるものだろう。

 実際に父親である筆者が読んでも、子どもとパパが無事に再会して「ぼくのパパだ!!」のページでは、子どもの顔に喜びがあふれかえっていることが自分ごとのように嬉しく感じる。また筆者はこのページを見て、保育園に子どもをお迎えにいったとき、自分を見つけた子どもが満面の笑みで走ってきてくれた場面を思い出し、親子愛のかけがえのなさにジーンときてしまった。

一緒に読むことで親子愛を育むにも最適な1冊と感じたので、ぜひ多くの親御さんにおすすめしたい。

文=古澤誠一郎

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