古川未鈴「でんぱ組.inc」の“野生のプロ”感は、ほかのアイドルグループにはないものだった/ツインテールの終わりに、 #未鈴の自伝

文芸・カルチャー

公開日:2025/3/14

2025年1月にエンディングを迎えたアイドルグループ・でんぱ組.incの古川未鈴さんが、自身初となる書籍を出版。

自ら「自伝を出版したいと言ったら無理そうだったので、どこかに書いていきたいと思っています」とXでポストした「#未鈴の自伝」を書籍化した本書。

でんぱ組.incメンバーとして振り返る16年の活動やアイドル哲学を語るエッセイの他、貴重な過去衣装での撮りおろしグラビア、アイドルとしてやり残したことをやっていく「アイドル実績解除」企画も収録した充実の内容となっています。

その他にも初めてのママ友である藤本美貴さんとのスペシャル対談も収録。アイドルだけではない「ママ」としての一面も垣間見ることができます。古川未鈴さんの多様な魅力が凝縮されている本書をぜひお楽しみください。

※本記事は『ツインテールの終わりに、 #未鈴の自伝』(古川未鈴/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

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『ツインテールの終わりに、 #未鈴の自伝』
(古川未鈴/KADOKAWA)

野生のプロ

 でんぱ組.inc の強みは、マジで普通の女の子がアイドルをやっている、というところだった。私たちは大手事務所で訓練してきたわけでもなく、オーディションで勝ち残って「今日が君たちのデビュー日だよ」みたいな感じでもなく、秋葉原になんとなく集まってきて、全員が歌がうまいわけでも、全員がダンスがうまいわけでもないのに、それぞれ自分たちの武器を掲げてやっている。そのしっちゃかめっちゃかな感じが、当時のアイドルシーンにはいなかった。

 本当のところを言うと、私は洗練されたアイドルになりたかったんだけど、結局私もこれしかできなかった。ハロプロに入りたかったけど、たぶん私はでんぱ組.inc だったからやっていけたんだろうと思う。

 

 もともとメイド喫茶を経験している子が多かったので、お客さんに喜んでもらいたいとか、おもてなしの心が強めの子がでんぱ組.inc には多かったと思う。何よりオタクの文化は大事にしたい。好きなことにはガチ勢であれ。秋葉原をちゃんと通ってきた人間、秋葉原のメイドマインドみたいなものが、メンバーにはあったと思う。

 

 自分自身のことをむき出しにすることを怖いと思うメンバーもいたと思うけど、私はすべてを武器にしていきたい人だった。むき出し感が武器となるのであれば、なんでも言っていこうと思った。いじめられた体験も、プラスになるんだったら、そんなにおいしいことはない。そういう部分を出していくことで、もっともっと共感してもらえると思った。

 

 普通のオタク女子がアイドルをやっていたのって、でんぱ組.inc が初めてだったんじゃないかなと思う。私はゲームの知識に関してはプロだと思っているし、ねむさんはサブカル系や渋谷系のカルチャーに関してのプロだったし、しゃべりのプロでもあった。梨紗ちゃんは歌や声優さんに関してのプロ、もがちゃんは誰もが目を惹く見た目と熱い思いのプロだったし、ピンキーは自分のことを子供だとわかっていて子供をちゃんとやるプロだったし、ダンスのプロだった。アイドルじゃないところで、それぞれみんながプロフェッショナルだった。

 それを私は“野生のプロ”と呼んでいた。それぞれが持ち寄った“野生のプロ”の力が、でんぱ組.inc で集結すると、めちゃくちゃ大きなパワーになる。それぞれが他の仕事で集めたパワーを、最終的にでんぱ組.inc に持ち寄って、でんぱ組.inc をもっともっとでっかくしていこうという思いがあった。

 

 私は最初の頃メンバーのことをメンバーと呼ぶのが恥ずかしくて、「ユニットの人」と呼ぶくらい距離感を保っていたし、人を寄せ付けないオーラを出していたと思う。グループ全体が仲良しこよしじゃなくて、誰かと誰かが依存していて二人だけの世界みたいなものを作ったりすることもなく、それぞれのパーソナルスペースを守っていた。お互いの世界に干渉せず、それぞれのプロのフィールドで戦って、でんぱ組.inc の力を強大にしていこうという思いが強かった。

 みんなの“野生のプロ”感は本当にすごかったと思う。それはほかのアイドルグループにはない部分で、本当の意味で“でんぱ組.inc の個性”と言える部分だったと思う。

<第3回に続く>

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