でんぱ組.inc 古川未鈴「アイドルってセンターが大事なようで別に大事じゃない」/ツインテールの終わりに、 #未鈴の自伝
公開日:2025/3/16
2025年1月にエンディングを迎えたアイドルグループ・でんぱ組.incの古川未鈴さんが、自身初となる書籍を出版。
自ら「自伝を出版したいと言ったら無理そうだったので、どこかに書いていきたいと思っています」とXでポストした「#未鈴の自伝」を書籍化した本書。
でんぱ組.incメンバーとして振り返る16年の活動やアイドル哲学を語るエッセイの他、貴重な過去衣装での撮りおろしグラビア、アイドルとしてやり残したことをやっていく「アイドル実績解除」企画も収録した充実の内容となっています。
その他にも初めてのママ友である藤本美貴さんとのスペシャル対談も収録。アイドルだけではない「ママ」としての一面も垣間見ることができます。古川未鈴さんの多様な魅力が凝縮されている本書をぜひお楽しみください。
※本記事は『ツインテールの終わりに、 #未鈴の自伝』(古川未鈴/KADOKAWA)より一部抜粋・編集しました

(古川未鈴/KADOKAWA)
アイドルってセンターが大事なようで別に大事じゃない
2011年9月にトイズファクトリーに移籍をする前に、相沢梨紗ちゃんがでんぱ組.inc のリーダーに就任した。
今だから言える話だが、もふくちゃんから「梨紗をリーダーにしよう」と言われた時に、私じゃないんだ!?と、ちょっとショックを受けた。アイドルグループをやりたいと言い始めたのは私だったし、アイドルの経験もあったので、なんとなくグループの中でリーダー的にやっていた気になっていたからだ。
気を遣ってくれたのか、私には“ダンスリーダー”という謎のリーダーが与えられて、正直“なんじゃそりゃ”と思った。今考えたら、私はリーダーなんてできないので、やらなくて良かったなと思っているけれど。
リーダーではないけれど、ダンスリーダーであり、センターでもあった。いつからセンターにいたのか、どういう理由でセンターになったのかは覚えていない。みんなに「未鈴、真ん中に来なよ」と言われたような感じだったかもしれない。
でんぱ組.inc のセンターの概念というのがまた難しくて、たとえばライブ中私がずっとセンターにいるわけでもないし、結構入れ替わり立ち替わりになるんだけど、大事な写真などではなんとなく私が真ん中にいる。だからちょっと、不思議なセンターだなと思っていた。
ただ、取材に来る人たちだったり、外側にいる人たちには、“でんぱ組.inc のセンター”という印象がついていたと思うので、だんだんそうなったんだと思う。
もともと目立ちたがり屋ではあるので、センターに入れるのは嬉しいなと思いつつも、私には“センターの子は実はあまり人気がない”という持論がある。たとえば『美少女戦士セーラームーン』だと、月野うさぎちゃんがセンターに立っているが、実はセーラーマーキュリーの水野亜美ちゃんの方が人気があるし、『涼宮ハルヒの憂鬱』ではセンターの涼宮ハルヒも人気だが、実は長門有希の方が人気だったりする。センターだからって人気があるわけじゃない。実はセンターの横にいる子の方が人気がある。そんなイメージだ。
アイドルグループのセンターという概念は、AKB48の登場からだろうか。モーニング娘。も、安倍なつみさんや後藤真希さんがセンターにいたイメージはあるが、そんなに固執していたイメージはない。やっぱりAKB48の選抜総選挙あたりから、センターを“勝ち取る”というイメージがついた。
実は私は選抜制度があまり好きではない。もしも私がアイドルをプロデュースするなら、選抜総選挙とか、センターを争わせるようなやり方はやらないだろう。やってる本人もつらいし、それでオタクを釣るのも好きじゃない。ストーリーみたいなものを作って売るようなやり方や、センターの子にしか目がいかなくなるような感じも好きじゃない。“推し”という言葉があまり好きじゃないのは、そこに繋がっているかもしれない。
私はやっぱりグループ全体を好きでいてもらいたいし、ライブで感動して好きになってもらいたい。もちろん推しがいてもいいが、「センターが○○ちゃんじゃないなら嫌だ」みたいな過激派のオタクが増えたなっていう印象がある。センターが誰であろうといいじゃないか。そこに執着しているのが「君、ライブに何を観に来てるの?」という気持ちになってしまう。
ただ、私がもうちょっと可愛くて、もうちょっと影響力があったらいいのにな、みたいなことはよく考えていた。私はやっぱり芸能人顔ではないので、私がセンターじゃない方が、でんぱ組.inc はもっと人気が出たんじゃないかと、よく思っていた。私が端っこにいて、ねむきゅんが真ん中にバーンといた方が人気がもっと出たかもしれない。
でも、先に書いたように、私がセンターにいることで、横にいる可愛い子が際立つんじゃないか。そういう役割もセンターにはあるなと思っている。だからこそ、センターという立ち位置にプレッシャーを感じることはなく、“そこは私に任せてくれ”という思いでセンターを張らせてもらっていた。
<第5回に続く>