紫式部『源氏物語 四十一帖 幻』あらすじ紹介。最愛の妻を失いうつろな日々を送る源氏だが、それでもやはり“光る君”だった
公開日:2025/3/11
世界最古の小説と言われる『源氏物語』を読んだことはありますか。国語や歴史の教科書に掲載されていたり、著者・紫式部の人生がドラマ化されたりして、興味がある方も多いかもしれません。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第41章『幻(まぼろし)』をご紹介します。
目次
1.『源氏物語 幻』の作品解説
2.これまでのあらすじ
3.『源氏物語 幻』の主な登場人物
4.『源氏物語 幻』のあらすじ

『源氏物語 幻』の作品解説
『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。
『幻』は、源氏の最晩年の物語です。亡き紫の上を偲んで詠んだ歌からくる章名で、紫の上を失いうつろな日々を送り、出家を決意するまでの源氏の姿が描かれています。本章の最後の一節で源氏はやはり光り輝いていたと綴られ、この『幻』を以て“光源氏”の物語が幕を閉じます。次章『雲隠(くもがくれ)』は章名のみで本文がなく、次に続く『匂兵部卿(におうひょうぶきょう)』までが空白の8年間ということになります。その後の記述から、『雲隠』で源氏が出家し数年後に亡くなっているということを知るのですが、最期が描かれないことによって、光源氏がより神秘的で魅力的な男性として心惹かれる存在になっているのかもしれません。
これまでのあらすじ
長年、病を患っていた紫の上が静かに息を引き取った。最愛の妻を失った源氏は、深い喪失感から立ち直ることができない。出家したいと思いながらも、踏み切れずにいた。
『源氏物語 幻』の主な登場人物
光源氏:52歳。
明石の君:43歳。六条院に住む源氏の妻のひとり。
明石の中宮:24歳。源氏と明石の君の子。今上帝(きんじょうてい・冷泉帝譲位後の帝)の中宮となる。
夕霧:31歳。源氏と故葵の上の息子。
女三の宮:26〜27歳。六条院に住む源氏の妻で、薫の母。薫出産後に出家している。
匂宮:6歳。明石の中宮の子。紫の上に育てられ、母のように慕っている。
薫:5歳。源氏と女三の宮の子として生まれたが、実の父は故柏木。
『源氏物語 幻』のあらすじ
春になったが、紫の上を失った源氏は喪に服したまま、悲しみに暮れて引きこもりがちな生活を送っていた。紫の上と過ごした日々を思い出しては、非の打ちどころのない女性であったことを実感し、側に彼女がいない喪失感に沈んでいた。
女三の宮や明石の君を訪ねて語り合ったり、昔から仕えている女房と心を慰め合ったりするが、源氏の悲しみは癒えることがない。月ごとの行事を済ませ、四季折々の風景を見る中で、紫の上を思い出しながら1年が過ぎた。一周忌を終えた年の瀬に、いよいよ出家を決意し、身辺の整理を始めた。手元に残しておいた紫の上からの手紙も焼却した。
年末の法要で、源氏は久しぶりに公の場に姿を見せた。その姿は、「光る君」と呼ばれた頃よりも、光り輝いていた。
<第42回に続く>