紫式部『源氏物語 四十三帖 紅梅』あらすじ紹介。香りが大好きな匂宮に良い香りの紅梅を一枝贈ったのは…?

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公開日:2025/3/13

 世界最古の小説と言われる『源氏物語』を読んだことはありますか。文学としての魅力もさることながら、1000年前の人々の恋愛事情や暮らしに触れられるとても興味深い作品です。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第43章『紅梅(こうばい)』をご紹介します。

目次
1.『源氏物語 紅梅』の作品解説
2.これまでのあらすじ
3.『源氏物語 紅梅』の主な登場人物
4.『源氏物語 紅梅』のあらすじ

『源氏物語 紅梅』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

『紅梅』は按察大納言(あぜちのだいなごん)・真木柱(まきばしら)一家を中心としたエピソードです。娘と匂宮(におうのみや)の結婚を願う按察大納言が、香りのあるものが好きな匂宮に紅梅の枝を折って渡すシーンから、『紅梅』という章名がつけられ、また按察大納言は“紅梅”や“紅梅大納言”とも呼ばれています。

 按察大納言は、故太政大臣(かつての頭中将、源氏と若い頃から競い合っていたライバルであり親友)の次男で、若くして亡くなった柏木の弟にあたります。以前から物語の中に度々登場し、幼少の頃から美声の持ち主として源氏にも可愛がられていました。真木柱は、髭黒(ひげくろ、髭黒大将として過去に登場)と最初の妻の間に生まれた長女です。髭黒は源氏の養女・玉鬘(たまかずら)と強引に結婚し、激昂した前妻から灰を浴びせられた逸話で有名ですが、その髭黒を父として、とても慕っていたのが真木柱です。この章のようなサイドストーリーで、本筋では主人公とならなかった脇役のその後を知ることができるのも面白いですね。

これまでのあらすじ

 源氏が亡くなって数年が経った。世間で評判になっている貴公子としては、源氏の子・薫と、孫の匂宮がいた。いずれも美男子であるが、源氏の類まれな才能や美貌に比べると今一つ物足りない。源氏と女三の宮の子として生まれた薫は、幼い頃から自身の出生に疑惑を持ち、どこか陰のある青年になっていた。今上帝と明石の中宮(源氏の子)の皇子である匂宮は、生まれながら芳香を放つ体質である薫に対抗心を燃やし、朝夕に香を焚きしめる風流人に育っていた。

『源氏物語 紅梅』の主な登場人物

匂宮:25歳。今上帝と明石の中宮の皇子。

薫:24歳。源氏と女三の宮の子として生まれるが、実の父は故柏木。

夕霧:50歳。源氏の息子。

按察大納言(あぜちのだいなごん):54~55歳。故太政大臣の次男。兄は故柏木。

大君(おおいぎみ):26歳。按察大納言と前妻の子。春宮に入内。

中の君(なかのきみ):24歳。按察大納言と前妻の子。

東の姫君:真木柱と故蛍兵部卿宮の子。

『源氏物語 紅梅』のあらすじ

 故太政大臣の次男である按察大納言は、前妻を亡くした後、真木柱を妻として迎えていた。真木柱は、故髭黒が可愛がっていた娘で、蛍兵部卿宮(源氏の弟)と結婚し女の子を生んだが夫と死別し、その後結婚した按察大納言との間に男の子(若君)が生まれていた。

 按察大納言は、前妻との間に生まれた大君、中の君と、真木柱の連れ子の東の姫君を隔てなく思っていた。大君は春宮に入内し、真木柱は後見として宮中に出入りするようになった。今を時めく匂宮を中の君の婿にしたいと願う按察大納言であるが、匂宮は東の姫君に心を寄せている。なんとか匂宮の気を引こうと、按察大納言は庭の紅梅を折り、匂宮が可愛がっている若君(按察大納言の息子)を使いにして、中の君との結婚をほのめかす和歌と共に匂宮に贈ったが、やはり匂宮は中の君との結婚に気乗りがしない。当の東の姫君は、控えめな人柄で、華やかな匂宮との結婚は到底考えられず、匂宮からの手紙に返事すらしない。母の真木柱も、東の姫君の性格を考えると、浮気な匂宮との結婚は気が進まないと思っていた。

<第44回に続く>

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