紫式部『源氏物語 四十四帖 竹河』あらすじ紹介。最強モテ女だった玉鬘の20年後。年頃の娘を持つ玉鬘の目下のお悩みとイライラの原因

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公開日:2025/3/14

 平安時代に完成し、今も王朝文学の名作として輝き続ける『源氏物語』を、読んだことはありますか。文学としての魅力もさることながら、1000年前の人々の恋愛事情や暮らしに触れられるとても興味深い作品です。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第44章『竹河(たけかわ)』をご紹介します。

目次
1.『源氏物語 竹河』の作品解説
2.これまでのあらすじ
3.『源氏物語 竹河』の主な登場人物
4.『源氏物語 竹河』のあらすじ

『源氏物語 竹河』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

『竹河』は、“これは、源氏一族からは縁遠い髭黒に仕えていた女房たちが語った話である。その女房たちが語るには、源氏の子孫たちの話には間違いが含まれているとのことである。さてどちらが正しいか。”という前置きで始まります。

 源氏物語の脇役側の視点から描いたスピンオフのような『竹河』は、かつて様々な男性にもてはやされた玉鬘の20数年後の物語です。当時23歳の玉鬘は、密かに憧れていた冷泉帝の後宮で宮仕えをする直前で、毛嫌いしていた髭黒に強奪されて不本意な結婚をしますが、結果的には子供に恵まれ、夫に先立たれたものの裕福な暮らしを送っているということが分かります。娘の結婚にあれこれと悩み、息子が思うように出世しないと愚痴をこぼす玉鬘の姿に、「お母さん、余計なお世話!」という子供たちの声が聞こえてきそうです。いくつになっても心配が絶えない親心はいつの世も変わらないものなのですね。

これまでのあらすじ

 源氏が亡くなって数年が経った。世間で評判になっている貴公子としては、源氏の子・薫と、孫の匂宮がいる。いずれも美男子であるが、源氏の類まれな才能や美貌に比べると今一つ物足りない。源氏と女三の宮の子として生まれた薫は、幼い頃から自身の出生に疑惑を持ち、どこか陰のある青年になっていた。今上帝と明石の中宮(源氏の子)の皇子である匂宮は、生まれながら芳香を放つ体質である薫に対抗心を燃やし、朝夕に香を焚きしめる風流人に育っていた。年頃の娘を持つ位の高い貴族は皆、薫や匂宮を娘の婿にしたいと考えるが、薫は恋愛に消極的で、匂宮は移り気だという評判である。按察大納言(真木柱の夫)もまた、次女・中の君と匂宮との結婚を望むひとりであった。

『源氏物語 竹河』の主な登場人物

玉鬘:47~56歳。源氏の養女。髭黒と結婚したが、後に死別している。

匂宮:15~24歳。今上帝と明石の中宮の皇子。

薫:14~23歳。源氏と女三の宮の子として生まれるが、実の父は故柏木。

冷泉院:43~52歳。今上帝の前の帝。

夕霧:40~49歳。源氏の息子。

大君(おおいぎみ):16~25。玉鬘と髭黒の長女。按察大納言の娘とは別人。

中の君(なかのきみ):14~23歳。玉鬘と髭黒の次女。按察大納言の娘とは別人。

『源氏物語 竹河』のあらすじ

 髭黒・玉鬘夫婦には三男二女が生まれたが、太政大臣まで上りつめた髭黒はあっけなく亡くなってしまった。髭黒亡き後、経済的に不自由はなかったが、邸を訪ねる人も少なく玉鬘はひっそりと暮らしていた。

 息子たちは元服して自力で出世をしていくだろうが、娘の結婚問題が玉鬘の目下の悩みであった。今上帝から娘たちの宮仕えの要望があるが、明石の中宮が他を圧倒する寵愛を受ける中、そこに加わっても悩みの種になるだろうし、冷泉院からも熱心に求婚されるが、玉鬘は自分自身が冷泉院の要望に沿えずに髭黒と結婚してしまった過去から、決めかねていた。美しいと評判の娘に、夕霧と雲居雁の息子の蔵人少将(くろうどのしょうしょう)も熱烈に思いを寄せ、堅物と言われる薫でさえも興味を持っていた。薫には珍しく、「竹河」を風流ぶって歌い、気がある態度を見せた。

 結局、玉鬘はさんざん悩んだ末、冷泉院の妃・弘徽殿女御からのお墨付きを得て、長女・大君を冷泉院の妃としたが、この扱いに今上帝は不満を漏らした。大君は冷泉院の子を続けて生み、深い寵愛を受けたが、それが災いして弘徽殿女御の嫉妬を招いた。玉鬘の息子たちも、盛りの過ぎた冷泉院より、将来のある春宮に入内させるべきであったと、この結婚を非難した。一方で、長女・大君の代わりに次女・中の君を宮仕えに出すと、気苦労の多い大君よりも、中の君はかえってのびのびと宮仕えを楽しみ、世間でも評判になっていた。

 月日が経ち、中納言に昇進した挨拶に訪れた薫に、玉鬘はこの結婚は失敗だったと愚痴を言った。そして、こちらも順調に宰相中将に昇進する蔵人少将を見て、息子たちも夫が生きていればこうやってのんきに遊ぶこともできたのに…と我が子の出世が出遅れていることを嘆いた。

<第45回に続く>

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