紫式部『源氏物語 四十五帖 橋姫』あらすじ紹介。恋愛に奥手な薫に訪れた淡い恋の予感。しかし自分の出生の秘密を知ってしまい…

文芸・カルチャー

公開日:2025/3/15

源氏物語』を読んだことはありますか。古文で書かれていて難しそうという印象があるかもしれませんが、実は恋愛小説の傑作ともいえる作品です。文学作品としての魅力もさることながら、1000年前の人々の恋愛事情や暮らしに触れられる本作がどんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第45章『橋姫(はしひめ)』をご紹介します。

目次
1.『源氏物語 橋姫』の作品解説
2.これまでのあらすじ
3.『源氏物語 橋姫』の主な登場人物
4.『源氏物語 橋姫』のあらすじ

『源氏物語 橋姫』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

「橋姫」とは、薫が宇治で出会った美人姉妹のことで、この章から始まる「宇治十帖」のヒロインとなる姫君です。この姉妹の邸に仕える老女房から、薫は自分が柏木と母・女三の宮との間に生まれた不義の子であったことを知ります。淡い恋の予感とともに出生の暗い秘密を知ることになる薫と、好色な匂宮、そしてこの姉妹にもう1人の妹を加え、泥沼の恋愛ドラマが始まります!

これまでのあらすじ

 源氏が亡くなって数年が経った。世間で評判になっている貴公子としては、源氏の子・薫と、孫の匂宮がいる。いずれも美男子であるが、源氏の類まれな才能や美貌に比べると今一つ物足りない。源氏と女三の宮の子として生まれた薫は、幼い頃から自身の出生に疑惑を持ち、どこか陰のある青年になっていた。今上帝と明石の中宮(源氏の子)の皇子である匂宮は、生まれながら芳香を放つ体質である薫に対抗心を燃やし、朝夕に香を焚きしめる風流人に育っていた。年頃の娘を持つ位の高い貴族は皆、薫や匂宮を娘の婿にしたいと考えるが、薫は恋愛に消極的で、匂宮は移り気だという評判である。

『源氏物語 橋姫』の主な登場人物

薫:20~22歳。源氏と女三の宮の子として生まれるが、実の父は故柏木。

匂宮:21~23歳。今上帝と明石の中宮の皇子。

八の宮:源氏の異母弟。宇治でひっそりと暮らす。

大君(おおいぎみ):22~24歳。八の宮の長女。玉鬘、按察大納言の娘とは別人。

中の君(なかのきみ):20~22歳。八の宮の次女。玉鬘、按察大納言の娘とは別人。

『源氏物語 橋姫』のあらすじ

 源氏の異母弟に当たる八の宮は、高貴な生まれでありながら時勢に乗ることができず、世間から忘れられたようにひっそりと暮らしていた。仲睦まじかった北の方(妻)は2人の女の子を出産した後亡くなった。八の宮は悲嘆にくれ出家を願ったが、幼い2人の娘を残していくこともできず、娘を育てながら仏道修行に暮れる日々を送った。京の邸は火事で焼け、仕えていた女房たちも次々と辞めていき、移り住んだ宇治で寂しく世を忍ぶ生活をしながら、美しく育つ娘の成長を楽しみに過ごしていた。

 出家をせずに仏道に励む八の宮に尊敬の念を抱いた薫は、ある僧侶を通じて八の宮と対面し、仏の教えを学びながら八の宮と親交を深めていった。薫が宇治の邸に通い始めて3年が経つある秋の日、宇治を訪ねた薫は、琴と琵琶を合奏する八の宮の娘たちを垣間見る。姉の方は優雅で、妹の方は可愛らしく、美しい姉妹であった。あいにく八の宮は留守で、年老いた女房が出て薫の相手をし、薫に伝えたいことがあると言って昔話を始めた。

 老女房は柏木の乳母子で、柏木の臨終の際に薫に伝えるべき遺言を承ったと語るが、肝心なところで口をつぐんでしまった。薫は、老女房の話に無性に引き付けられながら、一方で可憐な姉妹の姿に心惹かれ、几帳越しに姉の大君と和歌を詠み交わして帰京した。

 京に戻った薫は、まさにこの宇治の姉妹のように山里に隠れている美人との出会いが理想だと言った匂宮に、姫君の話を語った。皇子という立場上、気軽に宇治に出掛けることのできない匂宮の好色心を煽りながらも、薫は老女房の話が気になって仕方がなかった。

 10月になり、宇治を訪ねた薫に八の宮は自分の死後娘たちの後見になってほしいと頼み、薫は喜んで引き受けた。明け方、薫はあの老女房と対面し、薫の出生と柏木の死について断片的に聞き出し、布袋に入った古い紙の束を受け取った。

 自邸に戻った薫がこの袋を開けると、それは柏木が薫の母・女三の宮に宛てた手紙であった。苦しみの中、辛い恋心や、誕生したばかりの薫への思いが乱れた筆跡で綴られているのを目にして薫は動揺したが、母・女三の宮を前にすると秘密を知ってしまったと明かすことはできず、ひとり心に抱え込むことしかできなかった。

<第46回に続く>

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