オムライスに「付加価値」を付けるなら…? 就活やビジネスに役立つ、「差別化」ではない「付加価値化」というスキル《柿内尚文インタビュー》
公開日:2025/3/17
「再定義化」で仕事の幅が広がった

――いきなり人生相談のようで恐縮ですが…私のようなフリーランスのライターとして「付加価値」をつくるにはどうすれば良いでしょうか。
柿内:本の中でも書きましたが、「再定義化」という考え方が使えるのではないかと思います。ライターの仕事は一般的に「原稿を書くこと」と定義されますが、それをもう少し抽象度を上げて考えると、違った見え方ができます。
僕自身、仕事内容を聞かれたら、以前は「編集者」として、「本を作る仕事をしています」と答えていました。しかし、ある時から「付加価値をつくる仕事」と再定義したんです。具体的には、「付加価値の種を発見し、それを磨いて、伝えていく」というプロセスを自分の仕事として説明するようになりました。
すると、仕事の依頼の種類が変わったんですよね。本を作るという枠内ではなく、企業からのコンサルやセミナー講演など、より幅広い仕事が舞い込むようになりました。仕事の本質は変わっていないのに、定義の仕方を変えただけで新たな機会が生まれたんです。
――確かに、ライターの仕事も「インタビューをして原稿を書く」と定義すると、それ以上の広がりは生まれにくいですよね。
柿内:そうなんです。もしライターの仕事を「話を引き出して、整理する仕事」と考えると、経営者の壁打ち相手になって、思考の整理を手伝う役割になれるかもしれません。経営者の中には自分の考えを話す相手がいない人もいます。話ができる相手は貴重な存在になるかもしれません。今のはひとつの例ですが、そうやって定義を変えることで、新しい仕事の可能性が開けると思います。相談の答えになっているか分からないのですが…。
――ありがとうございます。そういう考え方があるのか、と発見がありました。ところで、柿内さんは日頃から考えをまとめる習慣があるそうですが、本書を執筆して新たに気付いたことはありましたか。
柿内:書く前にすべて整理されていたわけではないので、本を書く中で考えが整理されて、気付いたことも多かったですね。改めて「付加価値」の重要性を実感したのですが、特に「仕事は付加価値を生み出すことと、作業をすることに分かれる」という考えが明確になったのは大きな発見でした。もちろん作業としての時間も必要なのですが、そんな中でも「付加価値をつくることはできないか?」と自分自身に問い直す視点が重要だと感じました。
――本書で著作としては4冊目となりました。最後に、今後書いてみたいテーマがあれば教えてください。
柿内:今一番関心があるのは、「これからの生き方や働き方」です。50代も半ばを過ぎて、人生の後半戦をどうシフトしていくかを考えるようになりました。体は衰えていくけれど、思考はそれに追いついていない。そこをどう適応させるかが今の大きなテーマですね。「アンラーン」や「リスキリング」といった言葉もありますが、もっと根本的な思考の変え方について考えたい。書く機会があるかは分からないですが、今一番興味があるテーマです。
――ぜひ読んでみたいです。本日はありがとうございました。
取材・文=堀タツヤ 撮影=島本絵梨佳