大人気「満月珈琲店」の占いBOOK。三毛猫マスターの12星座占いと、心が整う12星座のスイーツ、書き下ろし短編小説も収録【書評】
PR 公開日:2025/3/19

週のはじまりに配信される12星座の星占いを読むのが好きだ。私が好んで読む占いは、無闇に人の不安を煽る文言を使わない。穏やかな言葉を用いて、未来に希望を抱ける形で先々に起こるであろう潮流を読み解く文面からは、いつも温かなエールを感じる。望月麻衣氏と桜田千尋氏による最新作『満月珈琲店の星占い~心が整う12星座のスイーツ』(ポプラ社)を読んで、同じく包みこまれるような温もりと励ましが心に残った。
本書は桜田千尋氏のイラストと望月麻衣氏の文による絵本「満月珈琲店」から始まり、レシピ帖や小説なども大人気のシリーズの最新作。12星座ごとの特徴と共に「心が整うスイーツ」が紹介されているほか、短編小説も掲載された盛りだくさんの内容だ。スイーツ紹介の頁では、桜田千尋氏のイラストが目を引く。「おひつじ座のいちごフレンチトースト」にはじまり、「うお座のレモンゼリー」に至るまで、どのスイーツも豊かな彩りに満ちていて、思わず喉が鳴るほど魅力的だ。すべてのメニューに果物が使われており、星座ごとのレシピを決める過程を解説するくだりも、実に興味深い。

私は「冒険家」と称されるいて座なのだが、「いて座のマンゴープリン」は、夜空に浮かぶ月のような輝きを放つビジュアルが一際美しかった。マンゴー独特の艶感が見事に表現されており、目の前に甘い芳香が漂ってきそうなほど立体感がある。星座ごとの特徴についても、思わず笑ってしまうほど当てはまることばかりであった。特に、猪突猛進に突き進むきらいがある面は一切否定できない。「マスターからの一言」には、若干耳が痛い内容も含まれていた。自身の課題からはつい目をそらしてしまうものだが、本書で綴られる言葉は柔らかく、それゆえに抵抗なくするりと入ってくる。
星占いの後に収録された書き下ろし短編小説も、読後感が爽やかな良作である。主人公は、高校入学を機に仙台から京都に引っ越してきた女子学生の真帆。母親と2人の母子家庭で、父親は交通事故により死別している。引っ越し当日、仕事で家を空ける母親を見送った真帆は、鴨川の河川敷でフルートの練習をしていた。そこに、本シリーズで欠かせない存在である「満月珈琲店」の三毛猫マスターが登場する。「素敵な演奏のお礼にご馳走したい」と申し出るマスターの言葉に、真帆は驚きながらも喜んで応える。
「ひとつだけ」と言い添えて、マスターはお店のコンセプトを簡潔に述べた。
“当店はお客様にご注文をうかがうことはございません。私どもが、あなた様の状況に合わせて、とっておきのスイーツをご用意させていただきます”
メニュー表には、それぞれの星座ごとのスイーツが記されていた。真帆は自身の星座がおひつじ座であることから、「おひつじ座のフレンチトースト」が出されるものと予想したが、マスターが差し出したのは「かに座のバナナホットケーキ」だった。どうして? と訝しむ真帆に対し、マスターは次のように語る。
“今宵のメニューには、魔法が入っています。もし、その魔法の効果を感じたら、明日の夜もここに来てください”
マスターがどのような魔法を施したかは、ここでは明言しない。ただ、この魔法を必要としている人が、年齢問わず世の中にはたくさんいるのだろうと感じた。魔法の力は、スイーツのみならず、本書の中に存分に込められている。この物語を読み、真帆の変化を羨んだのなら、自分の力で同じ変化を辿ればいい。そういう意味では、自分に魔法をかけられるのは、ほかならぬ自分自身なのだろう。
夜空に光る星や月の力は、不思議なほど人の心や身体に影響を及ぼす。その前兆を先取りして心構えをすることで、生きづらさが和らぐケースは存外多い。星占いは、未来の不安を煽るものではなく、未来への希望につながる光だ。占星術の不思議、人の心の豊かさ、誰かを思う気持ち。それらが魅力的なスイーツと絡み合い、優しくも奥深い味わいを奏でる本書は、月の出ている晩にこそ楽しみたい。自身の星座にちなんだスイーツを食べながら、なんてシチュエーションで味わえたなら、まさに至福の極みであろう。
文=碧月はる