「北村匠海くんに『すげー映画だね!』と興奮しながら握手しました」映画『悪い夏』原作者・染井為人×脚本家・向井康介×監督・城定秀夫 鼎談で明かされる撮影秘話
公開日:2025/3/25

――女性関係に免疫がない公務員を好演した北村匠海さん、飛ぶ鳥を落とす勢いの河合優実さん、ヤクザ役の窪田正孝さんと、その子分的な役回りの竹原ピストルさんなど、実力派かつ大人気のキャストが集結したことでも話題になっています。
向井:北村くんはあんなにイケメンなのに、この映画ではちゃんと「童貞感」があって、さすがだと思いました。一方、河合さんとはこれまでがっつりと仕事をしたことがなかったので、「これが噂の河合さんか……」と(笑)。演技力はもちろん、ものすごく存在感がある方ですね。
城定:僕は河合さんとご一緒するのは3回目でした。初めてお会いしたのは某作のオーディションでしたが、ひとこと台詞を読んだ瞬間、「天才が現れた!」と思ったものです。きっとその場にいた全員が思ったはず。彼女のどこがどう素晴らしいか言語化するのは難しいですが、向井さんがおっしゃった通り、存在感がすごくある俳優だと思います。
向井:10年にひとりくらいの割合で、その世代のミューズが現れるもの。たとえば蒼井優さんとか。まさに河合さんは今の時代のミューズなのでしょう。
染井:確かに、凜とした佇まいなのに儚さや脆さも感じられる、希有な俳優ですよね。
向井:じつは初号試写のとき、ふたつ隣の席が河合さんだったんです。でも恥ずかしくて目も合わせられませんでした(笑)。
染井:僕は北村くんが隣にいたので、「すげー映画だね!」「絶対ヒットするし、話題になるよ!」と大興奮しながら握手しました(笑)。
向井:窪田くんの演技も光っていましたね。裏社会に通じる金本は、演じる人によってはステレオタイプになってしまいそうだけど、窪田くんなりに咀嚼した結果、あのやばくて怖い人物像になったのでしょう。竹原ピストルさんも素晴らしかったです。
城定:竹原ピストルさんといえば、映画に出演する前から原作のファンだったそうですよ。
染井:そうそう、竹原さんがSNSで「『悪い夏』が面白い」と書いてくださっていると読者さんが教えてくれて。当時、ものすごく嬉しかったことを覚えています。そんな流れもあってキャスティングされたのかと思っていましたが、関係ないんですよね?
城定:はい。それは偶然ですね。それでいうと北村さんはミュージシャンとして竹原さんの大ファンで、ライブにも通っていたらしいんです。結局、いろんな縁があって、集まるべくして集まった人たちなんだと思います。映画を撮り終わってみて、「このメンバーじゃなきゃダメだったんだな」と思うことがよくあります。それは、キャストのみならず、染井さんや向井さんをはじめ、裏で頑張ってくれたスタッフたちにも言えること。このメンバーじゃなければ、こんなにいい映画にはならなかったと思います。
ところで皆さんは、登場人物への罪悪感みたいなものはありますか? 僕にはあるんです。最初はとんでもなく嫌な目に遭わせようと思っている役でも、「こんなに頑張っているのに、僕のせいで不幸になっちゃうのか……」と。
向井:ああ、確かに。別の作品で子どもを殺すシーンを描かなきゃいけないことがあったんですが、ある残虐な殺し方を思いついたんです。でもそんな殺し方をしたら呪われてしまうかもしれない……と、別の方法に替えたことがありました。染井さんはいかがですか?
染井:めちゃくちゃありますね。原作の『悪い夏』でもある人物たちを死なせてしまい、すごく後悔したんです。だからこそ映画では彼らを死なせずにいてくれたことを知ってホッとしました。
城定:映画化に際し、染井さんが「設定など自由に変えてください」と言ってくださったので変更させてもらいました。
染井:このことを教訓にして『悪い夏』以降、人の死を描くときは慎重になりました。