タイパ重視のZ世代にバズる秘訣とは? 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』をはじめ、ヒット続出! スターツ出版の次なる一手【インタビュー】
公開日:2025/3/28
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(汐見夏衛)をはじめ、切なく眩しい青春小説でベストセラーを連発しているスターツ出版文庫。そんな中、今年3月、レーベル内レーベルとして「スターツ出版文庫アンチブルー」が創刊された。コンセプトは「綺麗ごとじゃない青春」。恋愛だけではない、刺激的な青春小説を世に出そうと試みている。
これまでのスターツ出版文庫に反旗を翻したのか、それとも……? スターツ出版文庫編集長の森上舞子さん、企画立案に携わった齊藤嵐さんに新レーベル発足の背景、今後のラインナップ、さらに若い人たちの価値観について話をうかがった。

青春を表から見るか、裏から見るか
──スターツ出版文庫といえば、青くてエモい表紙が目を引く「ブルーライト文芸」の第一人者です。それに対し、今回立ち上げたのは「アンチブルー」。既存の「ブルーライト文芸」に対するカウンターとして発足したのかなと思いましたが、実際のところいかがでしょうか。
齊藤嵐さん(以下、齊藤):「アンチブルー」というレーベル名ですが、「ブルーライト文芸」の“ブルー”というより“青春”という意味合いなんです。眩しい恋愛を描いた青春小説を好む方は多いですが、中には「キラキラした青春なんて…」と思う方もいるはず。ただ、そうやって反発を覚えることも、ある意味王道の青春だと思うんですよね。そこで、王道の青春小説を形を変えて届けるために「アンチブルー」を立ち上げました。
既存のスターツ出版文庫も「アンチブルー」も、それが恋だったり、恋でなかったりしても、人と人が関わり合う青春小説を届ける場であることは変わりません。青春を表から見るのがスターツ出版文庫だとしたら、裏から見るのが「アンチブルー」。最初はレーベルを分けずにそういった作品も出していこうという話がありましたが、読者の方々へのわかりやすさ、受け取りやすさを考えて新レーベルにしました。
森上舞子さん(以下、森上):今までの青春小説を否定するつもりはまったくありません。ただ、今はもう少しエンタメ要素の強い作品が求められる傾向があります。モキュメンタリーホラーやデスゲームのようなキャッチーなものが流行っている時代なので、青春小説に軸足を置きつつ、届け方や見え方が違うもの、設定を変えたものを模索しようと考え、発足したレーベルです。
──キラキラした青春もあって、綺麗ごとじゃない青春もある。このふたつは両立するわけですね。
齊藤:そうですね。友達と部活に励んだり、夢を追いかけたり、恋愛したりする青春もありますが、苦しい思いをしたり、難しい恋愛に足を踏み入れたりすることも全部ひっくるめて10代ならではの体験なのではないかと思っています。しかも「アンチブルー」の作品は救いが一切ないというわけではありませんし、スターツ出版文庫にも苦しい気持ちを描いた作品はあります。どちらの作品にも両方の要素が入っていますが、青春の綺麗ごとじゃない部分、それを浮き彫りにする物語を動かす刺激的な面をより強く打ち出したのが「アンチブルー」なんです。
タイパ意識の強い若者に向け、刺激のある作品を
──「アンチブルー」を立ち上げた背景についても教えてください。スターツ出版文庫を刊行する中で、「恋愛以外の要素も欲しい」「キラキラしているだけでなく、もっと刺激が欲しい」という読者からのニーズを感じていたのでしょうか。
齊藤:そうですね。そもそも最近は、10代向けの青春恋愛小説が縮小傾向にありました。もちろん人気のある作品は今も読まれていますが、新刊のヒットが生まれにくくて。作品数が増えて競争が激しくなり、読者の興味も他に移りつつありました。
10代女性の年間ランキングを見ても、恋愛以外のジャンルに読者の関心がシフトしていましたし、スターツ出版文庫でも胸キュンがメイン軸の恋愛小説よりも主人公の等身大な悩みや葛藤、それを乗り越えていく成長感がメイン軸の作品の人気が高まっていて。友達との喧嘩を描くにしても、今までは最後に仲直りして「ずっと友達だよね」で終わるものが人気でしたが、最近は「いろいろ考えたけれど、あなたたちとは仲良くできない」という主人公の決断に共感するという読者さんの声も多く寄せられています。夢見がちなものだけでなく、現実的でシビアな人間関係との向き合い方も受け入れられやすいと感じていたので、違う路線も検討しようと考えたんです。
──市場動向の変化の背景には、何があるのでしょうか。
森上:ショート動画をはじめ、今は世の中にエンタメがあふれているため、若い人たちのタイパ意識が高まっていると言われています。結末がネタバレしていて短時間で感動できるコンテンツが増えた結果、主人公に感情移入しながらじっくり感動を味わう長編小説を届けるためには、フックになるエンタメ設定や刺激的な要素は不可欠になっているように思います。
スターツ出版から刊行している単行本の書籍のほうでは、タイパ要素のある作品が若い読者に支持されています。物語の入り口に読者を惹きつける刺激のある作品を打ち出したほうが、若い人に届きやすくなるかなと考え、「アンチブルー」に行きつきました。
──想定している読者層は、スターツ出版文庫と同じくらいの年代でしょうか。
齊藤:基本的には同じ年代です。恋愛以外の刺激をテーマにしているため、結果的にこれまでより少し上の世代にも届くとうれしいです。