木がいっぱいの山と、建物がいっぱいの山。隣同士、仲良く過ごすふたつの山を描いた絵本『もりやまさんと まちやまさんは』【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/5/3

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2025年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

木がいっぱいのもりやまさんと建物がいっぱいのまちやまさん。そのふたつの山は……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『もりやまさんと まちやまさんは』。2021年有田川絵本コンクール最優秀賞・イタリアボローニャ国際絵本原画展ファイナリストの作品をもとにして制作されたこの絵本、どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

advertisement

その違いに心を惹かれつつも……。『もりやまさんと まちやまさんは

「ずっと ならんでいましょうね」

もりやまさんと まちやまさんは
作:にしかわなおこ
出版社: 教育画劇

みどころ

木がいっぱいのもりやまさんと、建物がいっぱいのまちやまさん。同じ大きさだけれど姿は全く違うふたつの山は、お隣どうしのなかよしさん。

「おはようございます きのうより せが のびましたね」

毎日もりやまさんを見つめているまちやまさんは、もりやまさんの小さな違いにもすぐに気づきます。雨の日も風の日も、日照りや嵐のときも。夕陽が沈むとともに眠くなるもりやまさんと、夜になってもにぎやかにひかるまちやまさん。雪が降る頃には眠りこんでしまうもりやまさんと、変わらずもりやまさんを見守り続けるまちやまさん。ずっと一緒に過ごすふたつの山はいつか……。

同じ空の下、同じような大きさのもりやまさんとまちやまさん。けれどもりやまさんには木がいっぱい、まちやまさんには建物がいっぱい。その姿はまるで違います。

日々の天候や季節の移り変わりによってその姿を変化させていくもりやまさんと、その変化に敏感に気づくまちやまさん。

夜になればぐっすり眠るもりやまさんと、にぎやかに灯りを放つまちやまさん。冬になり雪が降ってくると、もりやまさんは夜ではなくても眠くなるのです。そして……。

2021年有田川絵本コンクール最優秀賞・イタリアボローニャ国際絵本原画展ファイナリストの作品をもとにして制作されたこの絵本。動かない、何も起こらない、ただそこに並んでいる。それだけなのに、どうしてこんなにも魅力的な場面が続くのでしょう。ふたつの山のささやかな日々は、それぞれに豊かで美しいのです。

その違いに心を惹かれつつも、きっとどこかでいのちはつながっている。そんな願いと喜びをじわりと感じることのできる、心に残る一冊です。

編集長のおすすめポイントは……

浮かびあがってくる物語は……

もりやまさんとまちやまさん。ページをめくればめくるほど、繰り返し読めば読むほど、それぞれが佇む姿に魅せられていきます。一年を通して劇的に変化していくもりやまさんと、季節によって装いを変えながらもどっしりとした安定感を見せるまちやまさん。その関係性や対比はさまざまなものに置き換えて考えることもできるでしょうし、大きな視野で見てみれば違いなんてないと考えることもできるのでしょう。読む人によって絵本から浮かびあがってくる物語は大きく違うのかもしれません。ぜひ、皆さんのお気に入りの場面も教えてくださいね。

もりやまさんと まちやまさんはにしかわなおこ/教育画劇

もりやまさんと まちやまさんは

もりやまさんと まちやまさんは
作:にしかわなおこ
出版社: 教育画劇

本記事は「絵本ナビ」から転載しております

あわせて読みたい