『遊園地ぐるぐるめ』で“最高に幸せなコラボ”! 青山美智子×田中達也が2人揃って初のトークイベント。救いのある物語の正体は「誰も死なない究極のSF」《イベントレポート》
公開日:2025/5/10
創作は思いがけないほうに転がるほど楽しい

物語が進むにつれてテーマの核心に迫っていく本作。青山さんによれば、Web連載が始まった頃は、物語のエンディングはもとより、タイトルが示す意味さえ、まだ決まっていなかったというから驚きだ。
「ある程度の設計図はあるけど、書きながら思いがけない展開になっていくほうが楽しいし、書く幸せを感じます。物語の方向性は小説が教えてくれること。だから、物語の秘密がわからないまま走り出しても全然不安じゃない。それはクリエイターあるあるかなって」と青山さんが語ると、田中さんは本作のタイトルが後半になってから決まったことに驚きながら、「(自身の作品でも)要素の選び方が下手だとできないんだけど、これくらい繋いでおけば絶対にできるっていう匂いがある。後付けとは違うんだけど」と同調。これには青山さんが「わかるわかる…!」と大きく同意。その興奮が客席まで伝わって、笑いが起きたほどだった。
過去作に見る、言葉とアートの意外な共通点

2人の過去作にまつわる話も飛び出した。田中さんが手掛けた青山さんの小説『人魚が逃げた』のカバーには、意外な人物が登場しているという。「エピローグあたりで判明するさまざまな人々が登場しています。読んだ後によくよく見てください」と青山さん。読後にカバーのミニチュアアートをもう一度味わうのも、青山美智子×田中達也作品の楽しみ方といえそうだ。青山さんによれば、田中さんのアートに登場するミニチュアは「ただの通行人じゃない」「眺めていると会話が聞こえてくる」とのこと。“モブ(=その他大勢の人物たち)を意識する”というこだわりに、同じクリエイターとして学ぶところも多いという。

一方、田中さんは、2022年に刊行された『くみたて』(福音館書店)以降、絵本作家としても活躍。これまでの作品は自身で文章を手掛けているが、今度は青山さんと一緒に絵本を作りたいという想いもあるという。「見立てってモノマネみたいな感じで、誰にでも通じないといけない。子どもにも伝わるようにしたいという想いがあって。もし青山さんと絵本を作るなら、文章を書いてほしいですね。青山さんのお話って、子どもにとっても優しいのかなと」。そう語る田中さんに対し、青山さんは「難しい言葉は使わず、小学生から90歳、100歳まで読める本を書くと決めています」と独自の執筆のルールについて触れた。言葉とアート、ジャンルは異なるものの、子どもにも伝わるわかりやすい表現は、創作の共通点であるようだ。
ちなみに、子どもが読める小説というと児童書が思い浮かぶ。ところが、青山さんは児童書に“大人じゃないと書けない”というイメージを持っているらしく「私はまだそこまで大人ではないので…。もし児童書を書いたら、“青山さん、大人になったんだ”と思ってほしい」と笑う。