望月麻衣「共存する人がいることが、“自立”には必要」。10周年を迎える人気ミステリ『京都寺町三条のホームズ』シリーズの最新刊に込めた思い【インタビュー】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/5/23

■最新刊で描いたのは、葵が一回り成長していく姿

――まさに「成長」が22巻のキーワードだと感じます。コロナ禍や就活でのハラスメントを乗り越えた葵が、自分の立ち位置を見つけ出す姿は爽快でした。

望月:若い頃って、自分のことを過大評価したり逆に自分なんて駄目なんだと卑下しすぎたりと、ブレてしまうところがあると思うんですね。それが徐々に安定していくことが「自立」につながると思っていて、22巻では、そういった葵の自立する姿を描きたいと考えていました。

――それが強く感じられるのが最終章ですね。「アンダー25・アート・プロジェクト」の候補者に選ばれた葵が、他の候補者と戦うことになります。

advertisement

望月:葵のいまの実力を再確認する展開でもありますし、22巻の前半ではかなりしんどい展開もありましたから、そこで読者が感じたストレスを一気に解放するようなエピソードになっているかと思います。

 22巻は全体を通して、清貴が葵の「後方支援」みたいな立ち位置にいるんです。四苦八苦する葵のことを一歩引いたところで見守っているような。でも、いざとなったら助けてくれる。そんな風に、本当に困ったときには頼れる人がいること、共存する人がいることが、「自立」には必要だとも思います。

――22巻は「新章スタート!」と謳われていますが、文字通り、葵と清貴の新しい関係が楽しめる内容になっていますね。

望月:そう感じてもらえたら嬉しいです。それだけではなく、22巻では読者の方に喜んでいただけるようなエピソードをいくつか入れています。たとえば、清貴と秋人のワチャワチャしたやり取り。最近はあまり書いていなかったので、ふたりが軽口を叩き合う様子もしっかり書かせてもらいました。

 それから、「清貴の一日」というものを掘り下げたこともあまりなかったので、丁寧に描いてみました。ファンの方々にはちょっとニヤニヤしながら読んでもらえたらいいな、と。

――ラストでは海外に行くことを匂わせていますね。少し気が早いですが、23巻の舞台は海外になる予定でしょうか?

望月:23巻で描くかどうかは検討中ですが、清貴と葵には一度、ヨーロッパにも行かせたいなと考えています。タイトルに「ホームズ」とある以上、いつかはロンドンの地を踏んだほうがいいのではないか、と思うんです。それもまた楽しみにしていただければ。

あわせて読みたい