ミリオンセラー絵本『いつでも会える』に代表される作家・菊田まりこ氏の「ハートフルシリーズ」。その中から『君のためにできるコト』と『あの空を』の2作（いずれも白泉社）が、2025年6月3日に新装版としてリリースされた。

　菊田まりこの「ハートフルシリーズ」は、その名の通り心温まるストーリーを集めた作品群。子どもだけではなく大人も共感できる普遍的なテーマを軸に、物語を通して絆や心の成長、思いを伝えることの大切さや喪失と向き合う強さを、繊細なタッチのイラストで描いていく。

　代表作である『いつでも会える』は1998年にリリースされた絵本で、飼い主・みきちゃんとの別れに直面した犬・シロの心情が描かれる。韓国語やフランス語を始めとした翻訳版が刊行されるなど世界中の人が手に取り、累計発行部数は110万部超えのミリオンセラーを記録した。

　そんな同作に続き、今回新装版としてリリースされたのが『君のためにできるコト』と『あの空を』。『君のためにできるコト』は、熊のくまおくんとくまこちゃんの恋物語を描いた作品で、累計発行部数50万部超えのヒット作となっている。

　優しいくまおくんはくまこちゃんのために何かと気を回してくれるが、対するくまこちゃんは口下手で「あのね」の後に言葉が続かない。やがて、くまおくんは嫌われていると勘違いしてしまい、思い切ってくまこちゃんの前から消えようとする――。

　不安に駆られてしまったくまおくんと、想いを伝えられずに苦しむくまこちゃん。ふたりが少しずつすれ違っていく様子はもどかしく、悲しい気持ちになるかもしれない。しかし結末を読めば、温かい気持ちに包まれるはずだ。プロポーズの際に同作をプレゼントする人もいるなど大人も楽しめる作品なので、興味のある人は手にとってみてほしい。

　一方の『あの空を』は、空を飛ぶことに憧れるひよこのヒヨスケを描いた作品。「あのそらをとびたい」とさまざまな工夫をこらして空を目指すが、ひよこなので飛べはしない。それでも頑張ればいつか飛べると信じて努力を続けるが、やがて心が折れて「かなしいからもうとばない」と諦めようとする。だが、「でもほんとうにかなしいのは」と“ある感情”がヒヨスケを再び奮い立たせ――。

　ヒヨスケのように何かに憧れて努力し、その過程で一度夢に蓋をしてしまった……という人もいるだろう。そんな経験がある人ほど、彼が健気に頑張る姿を応援したくなるはず。そして同作に込められた「頑張っているすべての人へ届けたい」という菊田氏のエールを感じられる結末は、きっと読んだ人の心を明るく照らしてくれるはず。

『いつでも会える』と同じく、両作とも数カ国語で翻訳されるなど世界中の老若男女に愛されてきた作品。新装版が発売されるこのタイミングをお見逃しなく！