祭りに行きたくなる“夏”絵本! 「きんぎょすくい」の金魚たちがみずから店番したら…大胆な行動に、読者の子どもたちもビックリ【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/6/3

きんぎょだいさくせん
きんぎょだいさくせんまつながもえ / 白泉社

 もうすぐ夏本番。夏といえば、海に、山に、夏祭り! そして夏祭りといえば、屋台でしょうか。たこやきやわたあめもいいけれど、金魚すくいもいいですよね。まつながもえさんによる新作絵本『きんぎょだいさくせん』(白泉社)は、金魚すくいの金魚が大活躍するお話。読んだあとは、金魚すくいがもっと楽しくなるかもしれません。

 まつながさんは、2022年刊行の絵本『からっぽのにくまん』(白泉社)で第10回MOE創作絵本グランプリを受賞した絵本作家。『からっぽのにくまん』は、中身をつめ忘れられたからっぽの肉まんが、中身をつめてもらうために街へ飛び出すという、クスッと笑えるお話でした。本作の主人公となる金魚も、ユーモアあふれる行動で笑わせてくれます。

金魚が店主のおじさんの代わりに店番を!?

 夏祭りは、金魚にとっても年に一度の一大イベント。けれども、明日は本番だというのに、店主のおじさんは風邪をひいています。出目金の“めめた”たちは、おじさんにゆっくり休んでもらい、自分たちで夏祭りの店番をすることにしました。

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「えっ きんぎょが みせばん?」と驚くお客さんに、「おかねは そちらへ」と言ってピューッと水を吹き、料金箱の場所を教える金魚たち。男の子にすくい方のコツを教える金魚もいて、ちゃんとおじさんの代わりをしているようです。

 男の子が金魚のすくい方のコツを教わる場面で「すくう前にポイを水で濡らす」というコツを知った筆者の息子は、「今度やってみよう」と意気込んでいました。同じように、金魚すくいのコツを知って喜ぶお子さんがいるかもしれません。

ポイに飛び込む金魚に「え、自分から?」

 それにしても、金魚が男の子のポイに「えいっ」と積極的に入るところには驚きました。普通だったら、金魚はポイから逃げようとしますよね? けれども、この本に描かれた金魚は、子どもたちにすくってもらい、持ち帰ってもらうのを楽しみにしているようです。

「それっ!」とジャンプしてポイに飛び込む金魚と、ポイに入った金魚を「おめでとう」「いってらっしゃい」と送り出す仲間たち。現実の金魚すくいでも、金魚がポイの中に飛び込んできてくれたらいいのに…!?

 息子はこの場面を読んで「え、金魚が自分からつかまるの?」と驚き、それから「すくってもらいたいから夏祭りで張り切っていたんだね」と共感していました。ポイに飛び込もうとする金魚の表情は、真剣そのもの。がんばる彼らを応援しながら読むのも楽しいものです。

季節感たっぷりの夏絵本

 そんな中、“めめた”は、迷子になって泣いている男の子を見かけます。そこで、男の子のために金魚仲間たちと「きんぎょだいさくせん」を計画するのでした。金魚にしか考えつかないような大作戦です。やがて作戦は大成功し、金魚すくいは大盛況! がんばった“めめた”にも思わぬご褒美があるので、続きは本を読んで確かめてくださいね。

 スイスイと水中を泳ぐ金魚の姿には清涼感があり、夏に読むのにぴったり。また、浴衣や甚平を着て屋台をめぐる子どもたちの笑顔に、夏祭りの思い出がよみがえってきました。今年はこの絵本を読んで、家族を夏祭りに誘いたいと思います!

文=吉田あき

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