美しい表紙が魅力的な絵本【2025年5月・新刊&おすすめ絵本】
公開日:2025/6/4

書店で、図書館で、本棚で。特別な理由もなく手にした一冊にときめき、心震わせ、癒されることがあります。絵本の顔ともいえる表紙と目があった瞬間が、運命的な出会い。でも選んだ理由は偶然ではなく、実は自分の心にあるような気がしませんか。
いっぱいのカラフルなシャボン玉の中で、今の気持ちを選ぶならどんな色? 女の子が静かに入っていくのは、もやのかかった目覚めたての朝の森。 広い青空の下、少年とまっすぐに見つめ合う、見たことのない不思議な生きもの。 小さな男の子の胸にぽっかりと空いている穴、そこから舞い飛んでいるのは−−
みずみずしさ、鮮やかさ、静謐さ、コントラスト。さまざまな表紙絵の作品の中には、読み手が自分の心の奥底を見つめ、問いかけるような絵本もあります。 今の気持ちを映す鏡のような絵本の中から、あなたは、お子さんは、どんな一冊を選ぶのでしょうか。大切な一冊との出会いになりますように。
手を伸ばして触りたくなる本物のような果物たち!皮をむいて食べるまねっこも楽しめる『くだもの らららん』オノマトペや言葉のリズムが心地いい絵本

くだもの らららん
作・絵:金内織恵
出版社: 童心社
出版社からの内容紹介
植物画家が、くだものが実るようすをみずみずしく描いたあかちゃん絵本。リアルに描かれたくだものに、思わず手を伸ばしてさわりたくなる絵本です。オノマトペや心地よいリズムとくり返しの言葉は、あかちゃんにくだものの美しさと鮮やかさを届けます。くだものをじっくり見て、とって、皮をむいて、食べるまねっこも楽しめる、くだものの世界に入り込むような感覚を味わえる絵本です。
今の気分に近い色は?音にするとどんな感じ?自分の感情を言葉でうまく伝えられない子どもの心の声を聞き、寄り添う手がかりに『いまの きもちは どんないろ?』

いまの きもちは どんないろ?
作:えがしら みちこ
出版社: KADOKAWA
みどころ
色とりどりのシャボン玉が浮かぶ、その中で「いまの きぶんに ちかいいろは どれ?」「おとに したら どんな かんじ?」 とやわらかい言葉と色彩で問いかけます。
「やったー!」ってスキップしたくなるくらい心が動いたことは? くやしい、かなしい。のどの奥がぎゅーっとしたことは? 問われた子どもたちは内心うなずいたり、首をかしげたり、「そうかな……?」と考えたりしながら、不思議な心の中を探ってみるはず。
幼い子は、感情をうまく表現できなくて当たり前。泣いて、怒って、「どうしたの?」とたずねられて……。だんだん表現の仕方を覚えていきます。園や学校でも、言葉にするのが得意な子、なかなか口に出せない子、色々な子がいるでしょう。忙しい大人に遠慮し、どう言ったらいいかわからなくて面倒で不機嫌になっちゃう子もいるかも……。絵本を通じて、心の声に少しでも耳を傾けられたらいいですよね。
本書は、保育士や学校教諭、スクールカウンセラーなど現場の方から“子どもの気持ちを引き出す本”として好評だそう。人気作家えがしらみちこさんのみずみずしい水彩画は、眺めているだけで心がほどけます。えがしらさんは、『ようこそ こどものけんりのほん』(文 子どもの権利・きもちプロジェクト/白泉社)も手がけていますよ。
子どもたちの未来のために、広く存在を知ってほしい一冊です。
もやが立ちこめ緑の香り漂う目覚めたての『もりのあさ』。草花や動物が密やかな表情を見せる夜の森。森と共鳴するような出久根育さん最新作

もりのあさ
作:出久根 育
出版社: 偕成社
出版社からの内容紹介
女の子は、朝もやが残るころにカゴを持って森へと出かけていきます。
まだ目覚めたばかりの森。クモの巣には宝石のような朝露が光り、鳥たちは遠慮がちにおしゃべりをはじめ、やがてリスたちも枝の上に姿を見せます。目の前にある森は、夜になるといったいどんな様子をしているのでしょう?
鳥たちはどこで眠りについて、リスたちの赤いしっぽはどんな色に見えるのでしょう?
いつものベリーを摘むお気に入りの場所で、女の子は目をつぶって夜の森のことを想像しはじめます。咲いているはずの花や、空の上の方に見える月、飛んでいるものたちや、足音を忍ばせて歩くものたちのことを。まだ今は、自分の周りの小さな世界のことしか見ることができないけれど、女の子はまるで森と共鳴しているように、静かで優しい夜の森をありありと思い浮かべることができるのでした。みずみずしい朝の森と、密やかな夜の森が絵本の中に広がります。
夏の朝に出会った不思議ないきもの。共に過ごす日々はずっと続くと思っていた……友だちとの出会いと別れを抒情豊かに描いた物語『きみとそらのしたで』

きみとそらのしたで
作:ティム・フィッシャー
訳:橋本 あゆみ
出版社: 化学同人
出版社からの内容紹介
ひとりぼっちのぼくが出会った不思議ないきもの。ぼくらの夏はいつまでも続くと思ってた…
ある夏のあさ。不思議ないきものがあらわれた。ふわり、そらに舞いあがるきみは、まるでくもみたい。「ともだちになろうよ」ぼくはいった。その日いちにち、いっしょにすごした。それからまいにち、夏の間ずっと。ぼくらの夏は、いつまでも続くと思ってた…。あしたから学校がはじまる。ぼくはひとり、きみとの時間を思い出していた。
ともだちになった、きみとぼく。やがてはなれていくこと、会えなくなることを、まっすぐな子どもの目線でえがく。この絵本を読んだ人がそれぞれに、過去やこれからの「さよなら」に思いを馳せることのできる、切なくもあたたかな物語。
詩的な文章とやわらかな水彩画に、なつかしい夏の景色がよみがえる。ティム・フィッシャー、絵本デビュー作。
大切な人を失い、心にあいた穴。ずっとつきまとうこの穴はどうしたら……?悲しみや喪失感に寄り添い支えるグリーフケアの絵本『こころの あな』

こころの あな
著:リンジー・ボニヤ
絵:ブリジダ・マーグロ
訳:東菜奈
出版社: 岩崎書店
出版社からの内容紹介
弟が死んでから、ぼくたち家族には穴がつきまとう。
この穴をどうしたらいいの? 中に何があるの? どうして弟に会えないの?
喪失感に寄り添う〈グリーフケア〉の絵本。
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〈大切な存在〉がこの世界からいなくなったとき、心に穴があいたような感覚をおぼえることでしょう。だれにでも起こりうる、けれどとても特別で個人的な感覚。その穴のことを忘れたくても、見たくなくても、消し去ることは難しいのではないでしょうか。
この絵本は、そんな辛さを抱えた男の子に寄り添う物語です。黒い穴は日常の中にもつきまといます。だまって話を聞いてくれる人がいて、穴に向き合い本当の気持ちを吐き出せたとき、男の子の中で何かが変わったようです。
悲しみや喪失感に寄り添い手助けをする〈グリーフケア〉という支援がありますが、この絵本はそのようなプロセスをあたたかなイラストとともに描いた物語です。
黒い穴だけでなく、画面のそこここに現れる明るく黄色い光の意味も考えたくなる絵本です。
不安や心配、こわさ、真っ暗いトンネルの中にいるような気持ちのときも必ず見える小さな光――はじめは、それでじゅうぶん。『たった ひとつの ひかりでも』

たった ひとつの ひかりでも
作:キャット・イェイ
絵:イザベル・アルスノー
訳:まつかわ まゆみ
出版社: 評論社
出版社からの内容紹介
小さな子どもたちだって、不安なこと、心配なこと、こわいことは、たくさんあります。そんなとき、一度深呼吸をしてみましょう。心の中は真っ暗じゃない、きっとどこかに光が見えるはず。はじめは、それでじゅうぶん。小さな光があれば、道をてらすにはじゅうぶん……と語りかける絵本です。暗かったページが、ラストに近づくほどに豊かな色彩で満たされていきます。カナダの至宝と言われるイザベル・アルスノーが描く希望の物語です。