「世界第二位」の強みを生かした書籍発売戦略! ミステリー&文芸好き注目の「ハーパーBOOKS+」作家のトーク&サイン会に潜入!《イベントレポート》

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/6/11

柊サナカさん(左)と三日市零さん
柊サナカさん(左)と三日市零さん

 去る5月15日、ハーパー・コリンズ・ジャパンから新しい文庫レーベル「ハーパーBOOKS+」が創刊された。これから世界も視野に日本の面白い作品を送り出したいという同シリーズから、最初に登場するのは柊サナカさんの『黒猫のいる回想図書館』と三日市零さんの『魔女の館の殺人』。創刊記念イベントとして、お二人によるトーク&サイン会が5月18日に池袋ジュンク堂本店で開催された。

日本発の作品を世界に送り出したい!

 ハーパー・コリンズ・ジャパン社のことをご存じない方もいるかもしれないが、親会社が一般書籍部門で世界第2位の規模を持つハーパー・コリンズ・パブリッシャーズという、出版界では珍しいグローバル企業だ。その強みをいかすべく、今回の文庫レーベルのキャッチコピーは〈世界でめくれ〉。「世界中の支社に日本発の作品を送りたいという野望を胸に、ワクワクしたりドキドキしたり、笑って泣いて癒されて、どこよりも面白い文庫を目指している」という司会者からの紹介の後、作家のお二人を呼び込み、イベントがスタートした。

「作家は孤独な作業で、誰とも喋らないで書いているものですから、今日は本当に読者さんがいるのかなと思ったんですけど、こんなにいらしていて本当に嬉しいです」(柊さん)

「今日は何を喋ればいいのかなという感じで、非常に緊張しております。皆さんにとって面白いと思えるお話ができたらなと思っております」(三日市さん)

 この日のイベントには会場に集まった参加者だけでなくオンラインで観覧する参加者もいて、いきなり多くの読者を目の前にして少し緊張気味にご挨拶するお二人。実はお二人自身、パーティなどで言葉を交わしたことはあっても、ちゃんと話をするのは今回がはじめてとのことで、そんなドキドキもあったのかもしれない。が、トークが展開するとすぐに会場はリラックスしたムードになっていった。

 トークの主題はもちろん新刊について。今回の柊さんの新刊『黒猫のいる回想図書館』は、人生最悪の日に猫に話しかけられてつい返事をしてしまったら、目を覚ますと出口のない不思議な図書館に閉じ込められてしまった女性が主人公。あることをしないと出られないその図書館だが、その中での経験で次第に前向きに変わっていく彼女の姿が心に残るハートウォーミングなファンタジーだ。

 一方の三日市さんの『魔女の館の殺人』は「読者参加型」の新感覚ミステリー。「脱出ゲーム」をテーマにしたバディものだが、実際のゲーム参加者のように読者もゲームの謎解きに挑戦しながら、殺人事件の謎を追っていくという本格ものだ。かなりタイプの違う2冊だが、実は、文芸&ミステリー作品を刊行するのがハーパーBOOKS+のこだわりで、今後も奇数月の15日に興味深い本が続々登場するという。

どちらも「館」という意外な共通点も

 さてイベントでは、「物語の生まれたきっかけは?」「物語の推しポイントは?」「推しキャラは?」との質問にお二人がそれぞれコメントし、さらには三日市さんの「脱出ゲーム講座」もあって、作品をより楽しむためのよきガイドとなる内容が続いた。

 実はどちらの物語も舞台が「図書館」と「脱出ゲームの館」という「館(やかた)」であり、「それぞれ相手の物語の館に行きたいですか?」の問いには、「すごく行ってみたいです。ものすごく書き込みしながら作品を読んだので、ほんとにイベントとかで立体にしてほしい」(柊さん)、「図書館の中を探検したいです。出口がないって本当かって歩き回って、文房具が入っている引き出しも全部あけちゃうと思います」(三日市さん)と、お互いの作品世界に興味津々なのも印象的だった。

 その後、話題はお二人の「作家生活」について。作家になったきっかけのエピソードとして、三日市さんはデビュー前に友人に「はじめて書いた小説が16万字」とツイートされてバズった経験の持ち主として知られている。実は今回の新刊はそのときに書いていた小説なのだとか。「あのときはまだ書き上がっていない状態だったので、これはまずいことになったとめちゃめちゃ焦ったのを覚えています」(三日市さん)。

 一方の柊さんも、第二子を妊娠中に(上のお子さんは当時2歳)時間があるのでひたすらバイオレンス小説を書き、「このミステリーがすごい大賞」に応募した次の日に出産を迎えたというからすごい。「なんかホルモンが変になったりするんですよね。ある意味、お腹の中にいた赤ちゃんが書かせたみたいなこともあると思います」(柊さん)。

「ペンネームの由来」については、お二人とも「公募に出す段階で急遽つけたもの」という共通項が。ただし「〈石ノ下丸蟲(いしのしたまるむし)〉にするつもりが、提出しようとした玄関であまりにもふざけすぎじゃないかと思って、その場で捻りだしました。当時、サカナさんというブロガーのことをずっとサナカさんって読んでいたことがあって、そこからです」(柊さん)、「この作品の冒頭に爆弾を解除するシーンがあるんですが、そこに『爆発まであと5秒』ってカウントダウンのセリフがありまして。その『3、2、1、0』です。(四日市市のある)三重県とは関係ありません」(三日市さん)とあくまで独自路線をいくお二人に、会場には思わず笑いが起こった。

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