宮田愛萌「私は『可愛くて文章が書ける子』なのです」。渡辺祐真と“往復書簡”で交わした本音とは?【『晴れ姿の言葉たち』インタビュー】
公開日:2025/7/8

作家・宮田愛萌と書評家・渡辺祐真による共著『晴れ姿の言葉たち』(文藝春秋)が刊行された。
ポッドキャスト番組『宮田愛萌と渡辺祐真のぶくぶくラジオ』(TBSラジオ)でパーソナリティを務めたり、同人誌『ミモザ vol.1』を制作したりと、これまでも活動を共にしてきた二人だが、1年にわたる往復書簡という形式では、より深く互いの内面に踏み込んだ対話が交わされている。
本作に込めた思いや、書簡ならではの言葉の交わし方について、二人に話を聞いた。

■「手紙」だからこそ書けた本音
――本書が“往復書簡”という形式になったのはなぜだったのでしょうか?
渡辺祐真さん(以下、渡辺):編集者の山本さんの提案です。僕たちが「往復書簡をやろう」と言い出したわけではなくて。というか、(宮田に)手紙、嫌いなんですよね?
宮田愛萌さん(以下、宮田):ほんとに苦手なので、話を聞いたときには「マジか」って思いました(笑)。
――山本さんが、往復書簡という形式を選ばれた理由は?
山本さん:お二人の会話って、どんどん話題が広がっていくダイナミックな点が魅力なんですが、もっと時間をかけて、内面に向き合うようなやり取りもぜひ見てみたいと考えたんです。
――互いにじっくり考えながら言葉を紡いでいけるのが往復書簡だったわけですね。今回は言葉を届ける明確な「相手」と、二人のやり取りを読む「読者」がいるという、いつもとは違う書き方だったと思いますが、どのように意識して書かれましたか?
渡辺:僕、普段はすごく具体的な読者像を想像して書くんです。「このテーマならあの人に楽しんでもらえるように書こう」みたいに。これはゲーム会社でシナリオを書いていた頃に、「具体的なユーザーを思い浮かべて書くこと」を常に意識していたからだと思います。でも今回はその逆で、抽象的な「読者」に向けて書いた先に、宮田愛萌という確かな「相手」がいてくれるから、多少乱暴な表現でも大丈夫だろうと思って書きました。
宮田:私はこれまで、小説は自分が読みたいものを書くし、書評はその作品を知らない人にも届くように書いてきたんですけど、今回は完全に祐真さんに向けて書きました。私、手紙が本当に苦手なんですよ。友達に「誕生日プレゼントは手紙がいい」って言われても、「お金で買えるものにして」って断るくらい(笑)。だから書くからには、本気で祐真さんに手紙を書こうと思って書きました。

――それぞれご自身の思いを包み隠さず、率直に書かれている部分も多かったと思いますが、書くかどうか迷う部分はなかったのでしょうか?
宮田:内容自体は「祐真さんにだったら言ってもいいかな」と思えるものばかりだったので、迷いはありませんでした。「恋をしたことがない」っていう話も書きましたけど、もうアイドルではないし、今なら別にいいかなって。
渡辺:僕はむしろ、普段よりアクセルを踏んで、5割増しくらいで書いています。というのも、普段は自分の話を全然しないんですよ。自分のことなんか誰も興味ないだろうし、わざわざ時間とお金をかけて僕の話を聞いてもらうなんて申し訳ないって思っちゃうんです。
でも今回はこういう形式の本だし、もう腹をくくって、「しょうがない、書くか」と(笑)。こんな機会もそうそうないし、どこかで自分の話を聞いてほしい気持ちもあったから、せっかくならできる限りは書いてみようと思っていましたね。