宮田愛萌「私は『可愛くて文章が書ける子』なのです」。渡辺祐真と“往復書簡”で交わした本音とは?【『晴れ姿の言葉たち』インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2025/7/8

■返事はなくてもよかった

――宮田さんが書かれていた「私は『可愛くて文章が書ける子』なのです」という言葉は、かなり思い切った表現だと思いました。続けて「間違っても『文章が書けて可愛い子』ではありません」とも書かれていましたが、これはどんな思いで書かれたのでしょうか?

宮田:「文章が書けて可愛い子」じゃなくて、「可愛くて文章が書ける子」っていうのは、みんなそう思ってるんじゃないかなって。私自身もそう思ってるし、別に卑屈になっているわけでもなく、ただそういうふうに見られてるんだろうなっていう実感はあります。

――渡辺さんは、その言葉をどう受け取られましたか?

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渡辺:もう2年くらい一緒にいろいろやってるので、「言うだろうな」っていう感じ(笑)。全然驚きはなかったですね。「私は『可愛くて文章が書ける子』なのです。間違っても『文章が書けて可愛い子』ではありません。だからずっと負い目があるのです」っていう部分も、すごくよくわかるし、それが愛萌さんらしい言葉の選び方だなと思いました。

――その一方で、渡辺さんはご自身のコンプレックスについて、「暗くて、キモい顔」と率直につづられていました。

渡辺:ずっと思ってたことなんですよ。今はこうして笑いながら言えるけど、10代、20代の頃は、本当にしんどくて。せっかく今回こんなふうに自分の話を書いてもいい場をもらったから、一番しんどかった話を出しとこうと思ったんです。

――宮田さんはそのことに返事をされていなかったと思うのですが、それはなぜでしょうか?

宮田:私が「そんなことないですよ」みたいな返事をするのって、きっと意味がないなと思ったんです。誰にでもコンプレックスってあるし、他人の言葉で解決するものじゃない。だから、何を書いても蛇足になる気がして。祐真さんにはこういうコンプレックスがあるんだな、ってそのまま受け取るのが一番だと思いました。

渡辺:僕たち、どうでもいいことは会話のキャッチボールをしてるんですけど、大事な話ほど、一人でつぶやいてるだけなんですよね。

宮田:そうそう。

渡辺:昔の話なんですけど、小林秀雄っていう文学者が、すごく落ち込んでるときに、友人の河上徹太郎に会いに行って、黙って一緒にいたそうなんです。悩みを打ち明けるわけでもなく、ただいるだけ。そのときに河上が「沈黙にも相手がいる」って気づいたっていう話があって。それって、すごくわかるんです。

 コンプレックスを吐き出すのも、別に答えがほしいわけじゃない。でも壁に向かって言うわけにもいかない。だから隣にいてくれる人がいてくれれば、それでいいんです。もしこれがエッセイだったら、書けなかったと思いますけど、愛萌さんという相手がいたからこそ書けた。だから、返事はなくてもよかったんですよね。

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