上田竜也「“仲間”を書き、落ち込んだ気持ちが昇華」 初の小説『この声が届くまで』出版記念プレミアムトークイベント
公開日:2025/7/15

2025年6月27日、上田竜也さんが10年にわたり構想を温め、書き下ろした初の小説『この声が届くまで』(KADOKAWA)が発売された。バンド「zion(シオン)」の龍が、幼馴染やバンドメンバーと交わした約束を胸に、仲間たちとの絆を深めながら武道館を目指す青春ストーリーだ。
7月1日には、出版記念プレミアムトークイベントが「HMV&BOOKS SHIBUYA」にて開催され、上田さん自身の“仲間”への強い想いが率直に語られた。ここではそのトークの模様を抜粋してお届けする。
KAT-TUNに貢献したくて小説を書き始めた
――仕事仲間の方たちからは本の感想は届きましたか?
上田竜也さん(以下、上田):ジュニアのB&ZAIの菅田琳寧からは、『きょう届きました』と写真が送られてきました。中丸(雄一)くんは、自分のお金で買ってくれたらしいんです。読んでくれたかは定かではないけど(笑)。友達は感想を直にくれて、「余韻がすごかった」と言ってくれたのが一番嬉しかったです。
――すでに映像化の企画提案も何件か来ているそうですね?
上田:素直にめちゃくちゃ嬉しいです。そうなったらいいなとは思っていたので。ただ、まだ発売されたばかりだから、もうちょっとこの本を映像で観たいと思ってくれる方が増えたら、すっと自分の中でも「いける!」と思えるのかなと。
――10年前、どのような思いがあって小説を書き始めたのですか?
上田:ちょうど田口(淳之介)が抜けて、KAT-TUNが充電期間に入る時期で。自分がKAT-TUNにどんな貢献ができるのかと考えると、物語を作ってグループに持ってくるのがいいのかなと。それで小説を書き始めたんですが、当時は実現せず、去年、自分がやりたいことをできる状況になって、改めて取り組みました。
初の楽曲「Love in snow」が生まれた背景を物語に
――主人公の龍は、上田さんに似ていますか?
上田:僕自身の考えは、やはり龍に投影されています。でも彼ほど頑なで、周りが見えない感じではないかも(笑)。もう少し柔軟だと思います。龍も他の登場人物も、キャラクター作りには苦労しなかったですね。頭の中でキャラが勝手にしゃべってくれました。
――作中には、上田さんが作詞・作曲された楽曲も登場しますね?
上田:僕が初めて作った曲「Love in snow」ですね。実は、10年前に小説の構想を練っているときに、ボクシングマンガのアイデアなんかもあって。でもそれを編集者さんに相談したら、ありきたりでつまらないと言われて(笑)。じゃあ、「Love in snow」がなぜ生まれたのか、フィクションにできれば面白いかなと。

仲間と一緒に音楽がやりたい
――「zionのメンバーが手を繋いで挨拶する場面を書きたい」とも、10年前からおっしゃっていました。
上田:それは僕ら(グループをやっている者)にしかわからないかもしれません。ライブまでには色々なことがあって、みんなで話し合いながら乗り越えて、一つのものを作る。それでライブを終えた時に、ファンの前で手を繋いで挨拶する。「このグループで良かった! この景色が見られた」という一体感。そこでしか味わえない、“仲間”の絆だと思います。
――上田さんにとっての“仲間”とは?
上田:僕、“仲間”って、ずっと好きなんですよね。みんなで苦労を共有して、一つの幸せをつかみにいく。表面的に取り繕ったりせず、本音でぶつかり合って壁を乗り越えて、その果てに同じ景色を見る。それが僕の考える仲間であり、一人で何かするより、そういう仲間といたいんです。
――今後やりたいことはありますか?
上田:やっぱり仲間がほしいです。自分の中の主軸は音楽であり、仲間と一緒に音楽がやりたいと、アプローチを続けています。この小説も、「仲間集め」という面白い仕掛けとして、そのプロジェクトの一環になればと思っています。
トークの最後には、来場者とオンライン視聴者から寄せられた質問にも回答した。
Q.小説を書くなかで今まで経験で「これが活きているな」と思ったことはありますか?
上田:めちゃくちゃマンガを読んでいたこと。そして、歌詞を書いてきたことかな。あとは、芸能活動をしてきたことの経験は間違いなく役に立っているなと。
Q. 上田さんの小説と、中丸雄一さんのマンガとのコラボはあり得ますか?
上田:いやないでしょ(笑)。世界観が真反対だから、多分、大げんかして殺し合いになると思います(笑)。でも、中丸くんが『この声が届くまで』にどんな感想を持つのか気になるので、読んだら連絡ください。

――本書をご覧くださっている読者の皆様に、最後にご挨拶をお願いいたします。
上田:会場にお越しくださった皆さん、オンラインで見てくださった皆さん、本当にありがとうございます。もちろん皆さん、これ(本)はお手元にあるんですもんね? あの、本の感想が気になります(笑)。ですので、とにかく何かしらで伝えてくださったら嬉しいです。 また今後の活動に関しましても、ファンの皆さんと、ありきたりな言葉で言うと、「仲良くやっていけたらいいかな」と思っています。引き続き、よろしくお願いします。
取材・文=松井美緒 写真=山口宏之

構想10年、上田竜也が仲間を想う心を小説にのせる――。世間から注目されないままバンド活動を続ける「zion(シオン)」。メンバーの一人・マサが脱退して、学生時代からの仲間である龍、ヒロト、誠一郎、毅志は窮地に立たされる。マネージャーの光、幼馴染の七海とともに最後の望みをかけて一念発起、困難を乗り越えながら憧れの武道館を目指す。