「エンタメって結局、反逆」泉谷しげるのパンク精神を支える2冊の愛読書【私の愛読書インタビュー】
公開日:2025/7/26

1971年に歌手デビューして以降、映画美術、俳優、タレントと多方面で活躍してきた泉谷しげる氏。「反骨精神」「歯に衣着せぬ発言」といったパブリックイメージが根強い一方で、漫画雑誌「COM」や「ガロ」に投稿を繰り返すなど漫画家を目指していた時期も。そんな泉谷氏が、今年5月に構想40年の自身初となる漫画本『ローリングサンダー』(生きのびるブックス)を発表。地球滅亡のカウントダウンが始まるなか起きたAI対人間の戦いの行方は――!? 作品制作の礎となった2冊の愛読書『火山の歌』(丸山健二/新潮社)と『コブラ』(寺沢武一/集英社)について伺った。
泉谷しげるPROFILE

1948年青森県生まれ、東京都育ち。1971年にアルバム『泉谷しげる登場』でデビューし、1975年に吉田拓郎、井上陽水、小室等、泉谷しげるの4人でフォーライフレコードを設立。1980年に映画『狂い咲きサンダーロード』で美術と音楽を担当し、ブルーリボン美術デザイン賞を受賞。1982年、映画『爆裂都市』で美術監督を務め、役者としても出演。2025年2月、6年ぶりのニューアルバム『シン・セルフカヴァーズ怪物』を発表。
反逆の純文学作家によるサイバーパンク小説
――今回、真っ先に挙げていただいたのは、1976年刊行の『火山の歌』でした。

泉谷 愛読書を選ぶのは難しいけれど、あえて選ぶとしたら、反逆の純文学作家・丸山健二が書いたこのサイバーパンク小説。当時、それまでの小説界にあった表現を破壊しようとする意欲を感じたし、それを実践してるんだよな。
――確かに丸山氏には「反逆」のイメージがあります。当時の芥川賞最年少受賞ホルダー(1966年、23歳の時にデビュー作『夏の流れ』で受賞)ながら、早々に文壇から離れて長野県に移住して。その後は名だたる賞にノミネートされるも辞退して、自作を出すための個人出版社を立ち上げています。
泉谷 すげー生意気なんだよな。それだけの腕前があるんだから、ずっと純文学を貫けばいいものを。でも、あの時代の純文学の先生方も文壇に逆らって新風を巻き起こすヤツをよしとしていたし、小説界にはそれを許容する器があった。自分もエンタメの世界にいて思うんだけど、エンタメって結局、反逆であり、批判なんだよな。戦争批判だし、政治批判だし、人間批判じゃないですか。

――エンタメって楽しいものですけど、時代を超えて残っているものって、仰るように、そういう要素が入ってますね。
泉谷 エンタメの名を借りて世に出した方が通りやすいというかね。いま社説とか誰も読まないじゃん。やっぱり、音があったり、すさまじい表現の絵だったりがある方が没入できるし、自分事としても捉えやすい。エンタメってみんなのもの、庶民のものだから。逆に権威持ってるヤツや金持ってるヤツが創ったエンタメなんて、クソ面白くないですよ。まさにパンクの精神。