“路線図にない駅”で惜別した人と会える。「ちびねこ亭の思い出ごはん」シリーズの著者が贈る感動作『くるり駅でさよならを 白黒ねこと夕暮れの町』を【マンガ】で体験!
公開日:2025/7/25

路線図には載っていないその駅で、二度と会えないはずの人が待っている――。2025年7月15日(火)、「ちびねこ亭の思い出ごはん」シリーズで知られる高橋由太の連作短編集『くるり駅でさよならを 白黒ねこと夕暮れの町』(ハーパーBOOKS+)が発売された。
物語の舞台は、千葉県内を走る「久留里線」。その電車にはときどき白黒の猫が乗っており、決まって路線図には載っていない「くるり駅」で降りるという。そして猫について行くと、どこか懐かしさを感じさせる街並みの先に、もう二度と会えないはずの大切な人が待っている。
そんな不思議な駅を訪れるのは、いずれも悲しい別れから立ち直れずにいる主人公たち。初恋の人や最愛の母、大好きな飼い主……。喪失の痛みを抱えた彼ら、彼女らが「くるり駅」でそれぞれの“さよなら”に向き合い、新たな一歩を踏み出していく。心にそっと寄り添う、“再生”の物語だ。
不思議な駅で織りなされる人間ドラマはもちろんのこと、巧みな表現力で綴られる風景描写も特筆しておきたいところ。著者の高橋氏は、千葉県君津市出身の作家。物語に登場する「久留里線」は房総半島を走る実在のローカル線がモチーフとなっており、ゆかりの地ならではの高い解像度で描かれる情景が、物語にさらなる温かみを添えている。
また高橋氏といえば、『ぼくはねこの管理人 浪漫荘おもいでダイアリー』や『猫は仕事人』など、これまで「猫」を題材にした作品を数多く手がけてきた。千葉の海辺の食堂を舞台にした「ちびねこ亭の思い出ごはん」は、現在までに9作品が刊行された人気シリーズで、2025年8月には第10作目が発売される予定だ。
いわば高橋氏の代名詞とも言える“猫”は、今作でももちろん重要な役割を果たしている。同氏の作品における猫は、あるときは道先案内人として寄り添い、またあるときは世界観を象徴する存在として描かれるなど、多くのタイトルにおいて作品のシンボルとなってきた。『くるり駅でさよならを 白黒ねこと夕暮れの町』に登場する白黒の猫は、どんな活躍を見せてくれるのか。その行方も見どころの一つだろう。
そして現在、ハーパーブックスのX(旧Twitter)では、同作の紹介マンガを公開中だ。漫画家の黒川あづさ氏が手掛けた今回の紹介マンガでは、繊細なタッチで描かれた優しい世界観が、作品の魅力をより引き立てている。


あの日、あのときに伝えられていれば……。そうした誰もが一度は抱くであろう後悔の念に、温かな光を灯してくれる『くるり駅でさよならを 白黒ねこと夕暮れの町』。「くるり駅」で巻き起こる奇跡の連続を、ぜひその目で確かめてほしい。