「どこ行った 暗証番号 書いた紙」ちょっぴり切ない“高齢者あるある”がずらり! 大人気「シルバー川柳」シリーズ、今年も登場

文芸・カルチャー

公開日:2025/9/3

シルバー川柳15 杖忘れ走って店に取りに行く
シルバー川柳15 杖忘れ走って店に取りに行く(公益社団法人全国有料老人ホーム協会、ポプラ社編集部:編集/ポプラ社)

“超高齢社会”を迎えた日本の世相を映し出す「有老協・シルバー川柳」。その選りすぐりの川柳を収録した『シルバー川柳15 杖忘れ走って店に取りに行く』(公益社団法人全国有料老人ホーム協会、ポプラ社編集部:編集/ポプラ社)が、2025年9月3日(水)に発売された。

 2025年で第25回を迎えた「シルバー川柳」は、2001年より毎年行われている川柳企画。高齢社会や高齢者の日常を題材とし、自作の未発表作品であれば誰でも参加可能だ。その人気は年々高まり、今年は昨年より多い1万5261句が寄せられた。

 そんな同企画の傑作選として刊行されている「シルバー川柳」シリーズも、今年で15冊目。今回は2025年の応募から選ばれた入選作20句、前年の応募作からセレクトされた68句、さらに一昨年から始まった「有老協賞」の作品を合わせ、計89句が収録されている。

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「シルバー川柳」では、老いを前向きにとらえ、時に自虐的に明るく笑い飛ばす内容が多く、人生の達人たちによる“お達者パワー”が全開。「腕立て伏せ 伏せたらずっと 伏せたまま」「どこ行った 暗証番号 書いた紙」「振り込める 金があるなら 苦労せん」といった、どこか切ない“老人あるある”をユーモラスに詠んだ句が満載だ。

シルバー川柳15
シルバー川柳15

 また長年連れ添ったパートナーや、家族との日常を切り取った作品も多数ラインナップ。「定年後 悠々自適は 妻でした」「寒くない やさしい妻が 猫に聞く」「いつどこで 逆転したのか 妻がボス」「妻の買う 俺より高い 犬の服」など、特に夫婦間の力関係を描いた句が数多く並んだ。

シルバー川柳15
シルバー川柳15

 一方で、時事的なキーワードを取り入れた作品も多く見られる。米不足問題を題材にした「備蓄米 孫が平らげ 帰ってく」や、2024年パリ五輪で初めて追加種目となったブレイキンを使った「リビングで すべって転んで ブレイキン」などがその一例だ。

シルバー川柳15
シルバー川柳15

 さらには「タブレット 使えず回る 寿司見つめ」「アレクサに まずは尋ねる 入れ歯どこ?」「配膳の ネコロボットに 父お辞儀」「老人会 LINEできれば 大スター」といった、昨今のデジタル化社会と格闘する高齢者の様子を詠んだ句も数多く紹介されている。

シルバー川柳15
シルバー川柳15

 ちなみに今年の「有老協賞」に選ばれたのは、「笑うこそ 施設に香ほり 老いたのし」。老いを楽しめる内容で、有料老人ホームの生活をテーマにした作品という条件にも沿った、明るく前向きな一句となった。

シルバー川柳15

「シルバー川柳」には、一見ネガティブに見えるトピックでも、捉え方一つで笑いに変えられるという、メッセージが込められている印象。何かと暗いニュースの多い世の中だからこそ、ぜひ同作を手に取り、元気をもらってみてはいかがだろうか。

イラスト=古谷充子

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