英国・東インド会社の初シェフパティシエになった江口和明さんが作る英国菓子本。そこには、いままでにない新しさがあった!【書評】
公開日:2025/8/28

このところアフタヌーンティーやスコーンが流行っているからか、英国菓子を食べる機会が増えていました。スコーンをおうちで作っていた時期もありましたが、子育て中だとなかなかハードルが上がってしまい、買ってくることが多くなる一方で…。
そんなときに出合ったのが、『江口和明の英国菓子』(KADOKAWA)。著者の江口和明さんがシェフパティシエを務めるパティスリー・デリーモで以前パフェを食べ、そのゴージャスな味わいと見栄えに私のパフェの概念がレベルアップしたというできごとがありました。江口さんは、第10回料理レシピ本大賞のお菓子部門で大賞を獲ったり、YouTubeやInstagramでお菓子はもっと簡単に作れる発信をしたりと、大活躍なのは知っていましたが……。
なんと、英国・東インド会社のシェフパティシエになって、英国菓子本を出版されていたのです。東インド会社って、昔、歴史の教科書で習ったあの……? 江口さんが作る英国菓子って……? ハテナがたくさんで、読む前から楽しみでなりません。
それまでの英国菓子に持っているイメージと言ったら、スコーンやショートブレッドといった地味でいて作るのがめんどうそうなものでした。それを見事に打ち破ってくれる内容に、驚きました。
というのも、キャロットケーキはアイシングに心奪われるビジュアルだし、アップルパイやサマープディングにいたっては見た目が華やかなこと! しかも作り方をよく見てみると、生地は材料を混ぜていけばいいだけだし、パイ生地は市販のパイ菓子を使う簡単さだし、サマープディングは食パンとフルーツで作れる手軽さで、私が思う英国菓子作りのハードルが一気に下がったのです。



ヴィクトリアサンドイッチケーキやスコーンなどの王道的なお菓子ももちろん載っていて、本来の作り方に縛られない江口さんのレシピを見ると、私にも作れそう!と思わせてくれるよさが。とりわけ、スコーンが刻みバターでなく溶かしバターで作るレシピに、これでこんなにおいしく作れるなんて!と感動の嵐でした。

すでに、キャロットケーキとティーローフ、ロックケーキは何度も作っていて、家族のおやつに朝ごはんに助かっています。材料はスーパーマーケットで手に入るものだし、混ぜて焼くだけというのが、時間のない私にも作れている理由なのかも。


これらだけでも充分なのに、まだまだ作りたくなるものが満載なのもうれしい。トライフルとイートンメスは暑い日にもよさそうだし、ジャムは使う果物が旬の時期には作ってみたい。紅茶の種類やおいしいいれ方も載っていて、読むだけでも楽しい一冊だなと思いました。

これまでの英国菓子のイメージをいい意味で覆してくれる本でした。「イギリスの伝統を尊重しつつ自分なりのアイディアを加えることで、もっとおいしく、もっと楽しい英国菓子の世界を提案してみたいーー」と語る江口さんの英国菓子には、期待を裏切らないおいしさ、作る楽しさがありますから。
文=関口民江
江口和明●人気パティスリー・デリーモのシェフパティシエ・ショコラティエであり、英国・東インド会社の初シェフパティシエ。YouTubeやInstagram、XといったSNSでお菓子作りの楽しさを広める活動も。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@KAZUCHOCOLATE
Instagram:https://www.instagram.com/eguchikazuaki/
X:@EguchiKazuaki