声優・井澤詩織「闇の摂取は適度に必要」。怪談本を責任編集&初執筆! 作家デビューなんて恐れ多い…と語るその真意は【インタビュー】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/9/22

 『井澤詩織の誰かに話したくなる怖い話』インタビュー

 声優業界でもよく知られた怪談好きで、竹書房の怪談文庫フェアでは4年連続でアンバサダーを務めている井澤詩織さん。このたび刊行する責任編集本『井澤詩織の誰かに話したくなる怖い話』(竹書房)では、ついに作家デビューも果たす。初執筆への想いや、怪談作家7人の推しポイントなどを語ってもらった。

縦書きは作文を書いていた時以来だぞ、と(笑)

——年間2000話を読む大の怪談好きで、今回は竹書房から作家デビューのお声がかかったと聞きました。その時はどんな気持ちでしたか?

井澤詩織さん(以下、井澤):たくさん読んでいるからこそ、執筆の難しさも分かるから、ミーハーな気持ちで「書きたいです」とは言えなくて、「できたらいいですけどね」ってふんわり答えていたんです。でも責任編集本を出させてもらえることになったので、お薦めの作家さんの、特に鳥肌が立ったお話をチョイスして。実話怪談本にしようと決めていたので、自分の執筆分も取材のためネタを話してくださった方にもう一回お話を聞きに行きました。長らくお世話になっているコンテンツのスタッフさんなんですけど。

 『井澤詩織の誰かに話したくなる怖い話』インタビュー

——その書き下ろしの怪談話『バレた』では取材から執筆まで一人で取り組んだそうですが、実際に執筆の難しさについてはどう感じましたか。

井澤:自分が読む時は、書き手側の感想があまり入っていない文章が好きなんですよ。純度が高く、体験者の話がストレートに伝わってくるので。だけど今回は書籍のコンセプト的にも、私が書いた足跡も残したかったので、文頭に「お世話になっている人から聞いた話です」というのを入れました。文章はシンプルだけど、自分を出すところと出さないところのメリハリはつけようと決めていたんです。

——特徴的な字間の空き具合なども、お話の怖さを引き立てていますね。

井澤:ここに注目してほしいなっていう箇所にギミックを入れました。パソコンで書き始めた時にまず、縦書きは作文を書いていた時以来だぞ、と気づきまして(笑)。慣れない縦書きで自分が表現したいニュアンスが伝わるのか…そう考え、恥ずかしいですけど、一回横書きで提出してから縦書きに直しました。横書きの時と同じようなニュアンスに仕上がるのかどうか挑戦でしたね。

——怪談だな、というのが書き方からも伝わってきました。ギミックのある箇所は、話を聞いた時に「こわっ」と思ったポイントだったりしますか?

井澤:そうですね。タイトルにしている「バレた」っていう言葉、なんか怖くないですか? 悪いことを隠している人が使う言葉というか、邪悪な雰囲気の言葉だなと思って。

——すごく緊張感があって怖かったです。でも最後はホッと安心できるようなお話でしたね。

井澤:後味が悪い怪談も好きですけど、神様が幽霊を退治してくれるようなお話も大好きなんです。昔話なんかだと、悪いことをした人が罰せられるようなお話も多くて、教訓になったりしますよね。

表紙に込められた思い。「自分の名前は小さめに…とお願いしました」

 『井澤詩織の誰かに話したくなる怖い話』インタビュー

——表紙にはご自身の口元が映っていて、タイトルにフィットしているし、魅力的なデザインだと感じます。

井澤:人の口元がいいですっていう希望を出したら、写真でどうですかと言ってくださって。口元、ちょっと恥ずかしいですけど。話しちゃいけないけど話したくなるっていう意味合いを含めて、内緒のポーズみたいな雰囲気にしてもらいました。ただ、作家デビューなんて恥ずかしいよと思って。同業の方からも「なんか本出すんでしょ」って言われるので、あ、そ、すみません、ありがとうございます…って(笑)。最初は「井澤詩織の」っていう文字もバーンと大きかったんですけど、おこがましいので小さめに…とお願いしました。

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