遊びながら算数の基礎となる「ナンバーセンス」を育む! 数とオノマトペの組み合わせに、2歳児が夢中に【書評】
公開日:2025/9/30


遊びながら自然に数を覚えてほしい――親の願いに応える絵本
生まれてすぐから言葉の音に触れ、1歳前後で初めての言葉を発し、3歳ごろまでには語と語をつないで文で話せるようになる――。この0歳から3歳ごろまでの時期は、子どもが言葉や数の基礎を身につけていく大切な時期です。
親としては「できるだけ早く、言葉や数の概念に触れてほしい」と願う一方で、「勉強や暗記のように押し付けるのではなく、遊びの中で楽しく覚えてほしい」と思うのも本音でしょう。
そんな気持ちに応えてくれるのが、累計200万部を突破した主婦の友社の人気シリーズ「頭のいい子を育てる」から登場した2冊――『すうじの ない あかちゃん かずえほん』と『すうじと であう あかちゃん かずずかん』(かしわらあきお/主婦の友社)です。
本記事では、筆者が数字を覚えはじめたばかりの2歳の息子に読み聞かせをした感想を交えながら、その魅力を紹介します。
認知神経科学が裏づける「赤ちゃんは数を理解できる」
本書の解説によると、赤ちゃんは言葉を話す前から「数」を理解していることが研究で明らかになっています。生後6カ月ごろから1〜3までの数をパッと見て把握でき、さらに「増えた(足し算)」「減った(引き算)」といった変化も理解できるのだそう。

こうした“ナンバーセンス”(数の直感)に着目し、オノマトペとかわいいイラストを通じて数に親しめるように作られたのがこの2冊。監修は、赤ちゃんの認知や発達研究の第一線で活躍する研究者・小林哲生氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所・上席特別研究員)。科学的な知見をベースにした安心感も、このシリーズならではの魅力です。
数字を使わずに“数”を楽しむ 『すうじの ない あかちゃん かずえほん』
最初に手に取ったのは『すうじの ない あかちゃん かずえほん』。その名の通り数字は一切出てこず、猫が1匹なら「にゃん」、2匹なら「にゃんにゃん」、3匹なら「にゃんにゃんにゃん」とオノマトペで表現されます。

2歳の息子に読み聞かせたところ、「にゃんにゃんにゃん!」と声を合わせて大喜び。ぞうの「ぱおーん」やロボットの「がしゃん」などもお気に入りで、声に出して楽しんでいました。
一方で親の側としては、「『ぱおーん』ぞうさんが2匹になって『ぱおーんぱおーん』になったねえ」などと、こっそり教育もできるのが良いところ。「数を無理やり教え込む」というより、「好きな音を楽しんでいるうちに自然と数を感じ取る」感覚で読み聞かせできるのが好印象でした。

数字と楽しく出合える『すうじと であう あかちゃん かずずかん』
一方の『すうじと であう あかちゃん かずずかん』は数字そのものに初めて出合うための図鑑。
魚が2匹で「ぶくぶく」、ねずみが3匹で「ちゅーちゅーちゅー」と、数字とオノマトペを組み合わせた楽しい表現が続くので、こちらも“お勉強感”なしで数字への親しみを高めてくれる印象です。

ねこが10匹登場したページでは、1匹1匹を指さしながら「にゃあ! にゃあ! にゃあ! にゃあ!……」と楽しそうに叫び、最後に「100匹のねこ」がどーんと登場すると、息子は「いっぱい!」と叫んで大興奮していました。

その後は本書の余韻か、何もない場所で「いち、に…」と数を数えはじめたりしていたので、知らないあいだにナンバーセンスが高まっているのかも……と感じました。
「数を楽しむ体験」が算数の入り口に! 成長に寄り添う2冊
この2冊を読み聞かせしてみると、「数字を教え込む」のではなく「数を楽しむ」体験を与えてあげることが、子どもが数字を覚え・使いこなすための近道なのかも……と感じられました。
遊び感覚で読み進めるうちに自然とナンバーセンスが育まれ、乳児期はオノマトペを楽しむ絵本として、そして2歳以降は数字入門の一歩として役立ちそうです!
ちなみに絵と文を手がけたのは、『しましまぐるぐる』『あかあかくろくろ』でも知られるかしわらあきおさん。赤ちゃんが安心して手に取れる丸みのあるイラストと、リズミカルなオノマトペの組み合わせは、筆者の息子も大好きで、本書も息子を笑顔にしてくれました。
この2冊が与えてくれるのは、算数を学ぶための「楽しい入口」そのもの。赤ちゃんから3歳ごろまでの発達のだいじな時期に、自然に数に親しませたい親御さんに、ぜひおすすめしたい絵本です。
文=古澤誠一郎