ヨシタケシンスケ、大喜利初挑戦に「こんな汗かいたことない」又吉直樹とのトークイベントでまさかの「回答かぶり」も?【『本でした』イベントレポート後編】

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/19

 お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんと、大人気の絵本作家ヨシタケシンスケさんの2人が織りなす創作の世界——『その本は』(ポプラ社)の第2弾となるコラボ本『本でした』(同)がこの夏に刊行。9月21日に開催されたトークイベントの第2幕では、2人がライブで大喜利をするという貴重な機会がもうけられた。笑いと感動が渦巻いたイベントの模様をお届けする。

文章と絵で大喜利に挑戦

「相手からのお題に答えて絵や文を創作する」という本書『本でした』の制作過程が“大喜利に似ている”ことから、イベント第2幕では2人がライブで大喜利に挑戦することに。“2人の男が村人たちから「本の復元」の依頼を受け、たった1行のヒントから「その本」を復元していく”という本書の内容にちなみ、観客が出したお題をもとに、その場で“本を復元”していく。

【1つ目のお題は…】
その本は、タイトルが『朝起きたらパンになっていた』でした。これって、どんな本でした?

 早速スケッチブックを抱えて創作に入る2人。お題を出した観客の女性は、本書にある「珈琲牛乳」の話が好きで、その流れで「パン」のお題を考えたのだとか。

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 スタートから5分ほどで、「僕から行きましょうか?」と又吉さん。マジックで書かれた少し長めの話を読み上げる。その内容は、「世界中の人々がパンを一斉に食べ始め、誰もその理由がわからなかったが、宇宙にいる地球外生命体だけは理由を知っていた。なぜなら、地球そのものがパンになっていたからだ」というもの。想像を超える壮大なストーリーに、会場から大きな拍手が湧き起こった。

 次に「はい、こちらです」とヨシタケさんが見せたスケッチブックには、2人の人物の絵が。「……お父さんはお寿司になっていた」とヨシタケさんが説明すると、紙の真ん中にちょこんと描かれた人物の可愛らしさも相まって、大きな拍手が送られた。

ヨシタケさん「しかも玉子になってました」
又吉さん「生臭くなくていいですね」
ヨシタケさん「そうなんですよ。で、お母さんを探しに行く」
又吉さん「お母さん何やってるんでしょうね?」
ヨシタケさん「玄関にイクラがひとつ落ちていて」
又吉さん「お母さんはイクラになった可能性が…」
ヨシタケさん「でも、お母さんはイクラがあまり好きじゃない。あれ? じゃあこのイクラは誰なの?って…」
又吉さん「お母さんは、イクラになった自分がイヤで飛び出して、鮭になっているかもしれない」
ヨシタケさん「後ろからマヨネーズと玉ねぎが追いかけてくるやつです」

 と、まるで漫才のようなやり取りも交わされて会場は大爆笑。大喜利が初挑戦というヨシタケさんは緊張の面持ちだったが、「こんな汗かいたことないですね。皆さん温かい。ありがとうございます」と感謝の気持ちを投げかけていた。

シンクロ回答で助け合い
シンクロ回答で助け合い

【2つ目のお題は…】
その本は、タイトルが『行方不明になりたかったが、なれなかった』でした。これって、どんな本でした?

 お題を出したのは、自分がメガネをかけているから、本書に登場するメガネの話が好きだと話す女性。今度は1分程度という速さで「とりあえず、先ほどよりだいぶ簡単なものですが…」と又吉さんが挙手。その内容は、「それは奈良の大仏のひとりごとです」というもの。

 又吉さんは「毎日人が来るからしんどいんですよ。ひとりになりたい時もあるんですよね。だから、こっそり東大寺を抜け出したんですが、ヘリコプターが上空を行き来して行方不明になれなかった」と読み上げると、ヨシタケさんは「すごい!」と大きな拍手をしながら絶賛。

 一方のヨシタケさんは「すっごく耳が長い」人の絵を披露。「耳を折りたたむんだけど、耳の長い人があっちにいたよって、どうしても目立ってしまう」と説明すると、「電車乗るの大変そうですよ」と又吉さん。「ドアの手前で一回こうして、こう入って、こう流さないと…」と手振り身振りを加えながら、ヨシタケさんの答えに続きの話を加えた。

又吉さん「会わせたいですね、奈良の大仏と耳の長い人」
ヨシタケさん「耳の長い部分を大仏のネックレスにして…ハッピーエンド」
又吉さん「たぶんまた目立ってしまう…」

 大きさや形が目立って行方不明になれなかった…という、まさかの「回答かぶり」だったが、「絵でよかった」とホッと胸を撫で下ろすヨシタケさん。どことなく同じ空気感をまとい、ついつい考えることが似てしまうことがある。そんな2人がお互いに助け合うという、ほのぼのと心温まる場面もあった。

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