ヨシタケシンスケ、大喜利初挑戦に「こんな汗かいたことない」又吉直樹とのトークイベントでまさかの「回答かぶり」も?【『本でした』イベントレポート後編】
公開日:2025/10/19
2人が挙げた架空の本が同じもの!?

【3つ目のお題は…】
その本は、タイトルが『ん』でした。これって、どんな本でした?
お題を出した女性は、「五十音の最後なので、その前に何がくるのかを2人に決めてほしかった」とのこと。
このお題には、又吉さんが、「あのドストエフスキーが絶賛した『ぬ』の続編」と、ロシア文学を代表する文豪をモチーフにして回答。一方、ヨシタケさんは、「幻の本の最終巻でした」という言葉とともに、可愛らしい絵を披露した。「『る』あたりで失踪して、もう続編はないんじゃないかと言われていたのが50年前。それが新大久保の中古書店で売られていて、最終巻が、じつは完成していた。…後からなんとか付け足せるものですね」とヨシタケさん。
そこに又吉さんが「しかも…おそらく、これ、同じ作者の本ですね」と驚きをもって伝えると、奇跡的なシンクロが発生したことに気づいた会場からもどよめきが。「ドストエフスキーがいちばん評価したのが『ぬ』だっただけで。ヨシタケさんの絵が、ドストエフスキーと同じ時代の感じがする…」と又吉さん。腰を浮かせながらヨシタケさんの絵をしげしげと眺め、「これ、ドストエフスキーや…」と、しみじみつぶやいて笑いを誘った。
「最近買った素敵な本」は?
イベントも終盤となり、最後に2人に振られたのは「最近買った素敵な本の話」というお題。又吉さんが挙げたのは、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』(小原晩/実業之日本社)だった。「本屋さんで見つけました。難しくないし、でも奥行きがあって面白い」と推薦コメントを伝えると、隣でヨシタケさんも「僕も大好きです」と同調していた。

続いて、ヨシタケさんが選んだのは『ドクロ』(ジョン・クラッセン:著、柴田元幸:訳/スイッチ・パブリッシング)という絵本。「怖いけど不思議な話。書き出しにインパクトがあって、そのままレジに持って行った」とヨシタケさんが話すと、又吉さんも「買おう」と興味津々。

ヨシタケさんによると、この本は、作者が昔読んだ本を旅先で思い出しながら描いた本だという。旅先では想像で描いたものの、もとになった本が後からわかったので読んでみたら、全然違う話で驚いたそうだ。「本に描かれていた好きなパーツが自分の中で組み替わってしまったらしい。だからこそ、自分でもこの本を気に入っているそうです」とヨシタケさん。
この話を聞いた又吉さんにも同じような体験があったらしく、「綾部(ピースの相棒)の本を読んで感想をYouTubeにアップしたら、『ここが好き』って話したシーンがまったく見当たらなかった。めっちゃ怖くないですか? 本当に、想像だけで本の内容を膨らませることができるし、それだけで構成できる」とのこと。
ヨシタケさんもまた、小さい頃に読み、デビュー作『りんごかもしれない』のヒントにもなった絵本『からすのパンやさん』を大人になってから読んだら、内容を何一つ覚えていなかったという。「本を読んだ時に全部覚えてなくてもいい。見開き一つでも覚えていれば読書として十分」と持論を語った。

大喜利の後、今回は時間が足りず、残念ながら見送りとなった観客からのお題を一緒に眺めながら、ワイワイと笑顔で会話をしていた2人。「こういうの、コーヒーやお酒を飲みながら答えるのも面白いですね」と又吉さんが言うと、「こういうラジオがあったら聴きたいですね」とヨシタケさんが答え、「これを保管しておいて、どこかでまたやりましょう!」と意気投合する2人。ところどころでライブならではの笑いや共感が生まれつつ、普段から気が合うという2人がカフェで話しているのを覗き見しているような和やかなイベントとなった。
取材・文=吉田あき 撮影=島本絵梨佳