日本ホラー小説大賞『ぼぎわんが、来る』の著者・澤村伊智、作家デビュー10周年!シリーズ最新作『ばくうどの悪夢』のこだわりと、待望の続編は?【インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2025/10/20

 日本ホラー小説大賞・受賞作『ぼぎわんが、来る』でデビューし、ホラー界に一大旋風を巻き起こした澤村伊智氏。2025年10月に作家デビュー10周年を迎えるとのことで、澤村氏の代表作・比嘉姉妹シリーズの最新作『ばくうどの悪夢』(KADOKAWA)が文庫化、さらにはWEBで期間限定で既刊の比嘉姉妹シリーズの読み放題企画もスタートするという。

 あらためて『ばくうどの悪夢』について、さらには作家生活10周年についてお話をうかがった。

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●映画に刺激され「悪夢」をテーマに今を描いた

――『ばくうどの悪夢』の着想はどこから生まれてきたのでしょう?

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澤村伊智(以下、澤村):本書の中にも出てきますが、海外の有名なホラー映画『エルム街の悪夢』からですね。公開されたのは僕が3歳くらいの時なのでリアルタイムでは見ていませんが、大人になってからVHSで見て。それが大好きなので映画と同じように「悪夢」をテーマにして、今ココの話を書きたいと思いました。

――執筆期間はどのくらい?

澤村:過去最高に長い作品なので、結構長くかかったのは覚えています。シリーズだけじゃなくて全著作を含めても一番長い話なので。

――舞台は兵庫県東川西市のT台という町が舞台です。ご出身も兵庫県のご出身ですが、何か理由はありますか?

澤村:出身は兵庫県の宝塚市です。ある程度土地勘があるというのが舞台にした理由のひとつですが、もうひとつは東京から離れた「地方」のイメージがあるところを狙ったから。とはいえ東北とかわかりやすく地方をイメージさせるわけでもなく、そんなに古き良き感じでもなく。意外と大阪に近くて都心とのアクセスは良かったりするので、わかりやすく括られにくい土地ではあるかもしれません。ちなみ東川西市もT台も実在しない、架空の地名です。

――作品の中には「ばくうど」というその土地に土着の謎の存在が出てくるのも、地方を感じさせます。あの存在も架空ですか?

澤村:そうですね。学術的な裏付けがあるわけではないので、それっぽくしているだけと言えばその通りなのですが。作中で「ばくうど」の由来について語るシーンがあるんですが、それらしく見せるために長い話にしていますが、脱落してしまう人もいるんじゃないかなと思いながら書きました。

――そうした設定を考えるのは楽しい?

澤村:どうかなあ。楽しい……ですけど、あまりデタラメは言えないからなっていうのはありますね。最終的に超自然的になるから全部デタラメではあるんですけど、どこまでがもっともらしくて、どこからが突飛なのか、ちょっとわからないですからね。そのへんはいつも「いいのかな、これ?」と思いながら書いているんですけど。

――執筆する中で、特にこだわった部分はありますか?

澤村:「悪夢を書きたい」となったときに、あんまり悪い意味で文学っぽくならないようにしたいとは編集者と話した記憶があります。夢を小説という形に落とし込むと、どうしてもシュールだったり前衛的だったりになってしまいがちなので、娯楽小説として完結した話を書かなきゃみたいな、そこはちゃんとやろうとした感じです。

――他の作品でもそうなのですが、ビジュアルがすごくリアルに浮かんできます。バケモノの色合いとか質感がリアルにイメージできるから、より怖いというか…。

澤村:そういうお声をいただくこともありますが、ビジュアルを浮かびやすくしようと思っているわけじゃなくて、想像の手掛かりになることを、たくさん、最適な順番で書いていって、ここはブレてもいいし、ここはブレちゃいけないし……みたいなことをすごく調整しながら書いていますね。

 ビジュアルのイメージみたいなものは書く前からあるにはあるのですが、文章にするときに「それはアリだろうか?」と一回検閲してから書いていくというか。だから僕の頭にあることをそのまま書いているわけではないんです。たとえば登場人物のイメージモデルもあったりするんですけど、それは2次元や3次元がごちゃごちゃだったりするのでさすがに調整したり……。

――イメージをアウトプットしていくという意味では、編集者から作家になったというのは脳の状態にとってはすごくいい状態になったのでは?

澤村:作家になる前に編集者もやっていましたけど、実は映像編集もやったりしていたんですね。実際、出版社を辞めた後も映像の仕事はやっていて、こっちのほうが楽しいなと思っていたのもあって……。

――そうなんですね! 映像の心得があるからこそ、文章からもビジュアルが浮かびやすいのかもしれませんね。

澤村:そうかもしれないですね。確かに自分はホラー小説よりもホラー映画から影響を受けている感じもしますから。

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