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澤村伊智

職業・肩書き
作家
ふりがな
さわむら・いち

プロフィール

最終更新 : 2021-10-29

1979年、大阪府生まれ。2015年『ぼぎわんが、来る』(受賞時タイトルは「ぼぎわん」)で第22回日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。同作は『来る』のタイトルで映画化された。19年「学校は死の匂い」で第72回日本推理作家協会賞・短編部門を受賞。主な作品に『ずうのめ人形』『予言の島』『邪教の子』など。

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

僕の話  次のパーキングエリアに止まった瞬間、真柄さんは「洒落にならんわボケ!」と堀さんを怒鳴りつけた。窓がビリビリ震えるほどの大声で。堀さんはもちろん、僕まで座席から飛び上がった。  身体を丸めて子供のように泣きじゃくる汀さんを、石黒さんが優しく抱きしめていた。 「申し訳ありません、やりすぎました」  運転席で正座すると、堀さんは後ろに向かって深々と頭を下げた。僕は助手席で脱力したまま皆の様子を眺めていた。  石黒夫妻を残して車を降り、真っ暗な駐車場で、僕と真柄さんは堀さんに説明…

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「あんた誰や?」思えばすべての辻褄が合っていて…/澤村伊智「高速怪談」【全文公開⑥】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

堀さんの話  僕は呆然と堀さんの笑顔を見つめていた。彼は口を開くと、 「澤口さんと僕は初対面です。今日顔を合わせることも知らなかった」 「……はい」  訊かれているのだろう、と思って僕はそう答えた。 「石黒さん夫婦も同様です」  振り返ると二人はかすかに頷いた。困惑した表情で顔を見合わせ、身を寄せ合う。 「そして真柄さんは」堀さんは声を大きくすると、「宇都宮さんに頼まれて承諾しただけです。まだ空きはあるか、知り合いの堀という編集者も連れていっていいか、と」 「そうなん?」  石黒さ…

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背後から凄まじい気配を感じる――冷や汗が流れ出た、その時/澤村伊智「高速怪談」【全文公開⑤】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

石黒さんの話 「お前それ『作り』やろ!」  沈黙を破ったのは石黒さんの怒鳴り声だった。思わず助手席から飛び上がる。 「はははは」  真柄さんは豪快に笑うと、「さすがに気付いたか」と再び煙草を摘んだ。 「もおー、勘弁してよ」  汀さんが不機嫌そうに言った。ぺちぺちと何度も叩く音がする。 「でもオチ以外は実話やで。一ミリも盛ってへん」  煙を吐きながら真柄さんが返した。ふわあ、と大きな欠伸をする。 「いや……参りました」  僕はそう言っていた。「真柄さん、こういう話するの得意だったんで…

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カメラマンが語る、とある出版社の編集長の話/澤村伊智「高速怪談」【全文公開④】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

真柄さんの話  ぴ、と近くで音がした。真柄さんがハンドルに並んだボタンから指を離すと、 「はいはい真柄ですよ」  と前を向いたまま答えた。高鳴っていた鼓動が収まり始める。 〈すみません、宇都宮ですー〉  ひょうきんな声が車載スピーカーから聞こえた。僕はダッシュボードに置かれた真柄さんのスマホに目を向ける。液晶には〈通話中 宇都宮浩〉と表示されていて、スマホ本体とシガーライターソケットがアダプタで接続されていた。  真柄さんは車のハンズフリー機能を使って電話を取り、通話しているのだ。…

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嫌な予感。この流れだと間違いなく――/澤村伊智「高速怪談」【全文公開③】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

汀さんの話  真柄さんの運転でセレナは伊勢湾岸道をひた走っていた。名神高速だと遠回りになるせいもあったし、四日市あたりの湾岸の夜景を見たい、と汀さんが提案したせいもある。今の雰囲気を変えたい。そんな意図があるのは察しがついた。  浜松サービスエリアを出発してから、車内では口数が減っていた。かといって眠っている人は誰もいない。僕も石黒夫妻も、後部座席の堀さんも起きていた。  あの絵のことが気になっているのだ。僕はそう推測していた。少なくとも自分はそうだった。美貌と言って差し支えない顔…

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「……ん?」不意に首を傾げた漫画家が、ノートに描きだしたものは…/澤村伊智「高速怪談」【全文公開②】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

石黒さんの絵  浜松の下り側サービスエリアに到着した。飲食店はあらかた閉まっていたけれど、ラーメン屋とおでん屋は営業していた。  僕はおでん屋で気まぐれに購入した「黒はんぺん」なるものと、フードコートのテーブル席で対峙していた。円形で平べったく茶色い練り物。地元でも東京でもこんなタネは見たことがない。割り箸から伝わる感触は思ったより硬く、いわゆる普通のはんぺんよりしっかりしている。 「青魚のすり身」  隣に腰を下ろした真柄さんが言った。山盛りのおでんが入った容器をテーブルに置くと、…

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雑談/澤村伊智「高速怪談」【全文公開①】

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『ぼぎわんが、来る』の澤村伊智氏による、小説の形をした怪談集『怪談小説という名の小説怪談』(新潮社)。 子連れで散歩中に見かけた怪しげな物件、語ってはいけない怖い小説、新婚旅行で訪れた土地での出来事…など、暑い夏の夜にゾクゾクする珠玉の7編を収録。 本連載では、「高速怪談」を7回に分けて全文公開! 関西方面に向け、乗り合わせて帰省をする男女5人。ひょんなことから車内で怪談会がはじまって…。ラストまで見逃せない傑作短編。

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智/新潮社)

雑談 「簡単に言うと、マスク被った殺人鬼が人殺しまくる映画」  背後で石黒さんが言った。ぼりぼり鳴っているのは頬髭を搔く音だろう。 「そんなの星の数ほどあるじゃん」  彼の隣から呆れた声がした。汀さん――石黒さんの奥さんだ。ガサガサとレジ袋の音がして「ぱん」と軽快な音が続いた。油とコンソメの匂いが運転している僕の鼻に届く。ルームミラーをチラリと確認すると、大きな黒縁眼鏡をした汀さんがポテトチップの袋に手を突っ込んでいるのが見えた。 「どんなマスクか覚えていらっしゃいますか? それで…

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「お守りは残り1つ……だめだ来る!!!」『ぼぎわんが、来る』【連載】第10回

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12月7日(金)公開! 映画『来る』原作小説、待望のコミカライズ! 幼少期に亡き祖父が恐れていた化け物“ぼぎわん"と邂逅した田原秀樹。 社会人となり、家庭を持った彼のもとに姿なき訪問者が……。 腕を失う後輩、自宅で起こる怪異、見えない恐怖が迫ったとき、彼がすがりついたのは――。 話題騒然のノンストップ・ホラー!

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斬首の森

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ISBN
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七つのカップ 現代ホラー小説傑作集 (角川ホラー文庫)

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朝宮運河
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すみせごの贄 (角川ホラー文庫)

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澤村伊智
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KADOKAWA
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アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿

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澤村伊智
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乗物綺談 異形コレクションLVI (光文社文庫 い 31-46)

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宮澤伊織
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坂崎 かおる
久永 実木彦
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光文社
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9784334101206
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さえづちの眼 (角川ホラー文庫)

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作家
澤村伊智
出版社
KADOKAWA
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2023-03-22
ISBN
9784041117361
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邪教の子

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作家
澤村伊智
出版社
文藝春秋
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2021-08-24
ISBN
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