タイタン・太田光代社長「私と夫(太田光)は正反対」30年の経営者人生を語る『社長問題! 私のお笑い繁盛記』インタビュー
公開日:2025/10/24
「なんでもかんでも謹慎」は世の中のために良くない
――タイタンのコンプライアンス研修のお話も面白かったです。芸人がコンプライアンスを守るなんてつまらないという意見もあると思いますが、太田社長は、コンプライアンスとは上手に付き合っていくものなのか、もしくは世の中は自然に変わっていくものなのか、どうとらえていらっしゃいますか?
太田 今、変化が極端ですよね。コンプライアンスの意識に関しては、日本はちょっと遅れていたので、改善すると驚くような変化になるから、今はしょうがないとは思います。爆笑問題はあまり変わらないかもしれないけど、その変化についていくのは、芸人にとっては厳しい感じになっているとは思うんです。でも、トータルで見ると、やりすぎ感もありますよね。「それって外野が口出すことじゃないんじゃないの?」とか「そこまでしなくていいよね」っていうのは、さすがに皆さんも気付くでしょうから、いい形で収まっていくだろうとは思ってますね。
爆笑問題が独立した時も――あれは、本人たちがいけないんですよ。でも当時は、大きな事務所をやめたら芸能界では生きていけないと言われていたんです。あの時、そこはクリアしたいと思ってやってきて、今はそういうことに縛られずにやっていけるようになりましたよね。タイタンはその初期の例としてはわりと成功して、自分たちでもやっていけるっていうサンプルぐらいにはなったかもしれないです。でもそれって、人権的にも普通のことですよね。周りの忖度も含めて、世の中としても、それはやっぱり良くないでしょうっていうことで、正しい方向に向かっていくんだと思います。それに、こういう時って新しいタイプの芸人さんが出てきやすくて。いろんなものをふまえた表現で突破する天才的な人が出てきて、「なるほど、ああやればいいのか」っていう道しるべにもなると思います。
――普通に考えておかしいことが変わってきて、世の中の人もそれを受け入れていくということですね。
太田 芸能人が何か失敗をした時に過剰に反応して、なんでもかんでも謹慎させるっていうのも、世の中のためにならないと思うんです。もちろん、犯罪は別ですよ。犯罪は絶対にダメです。でも、こんなに日本に元気がない時に、働ける人を休ませてどうする?って思います。なんだったら、ちょっとダメなことした人は、もっと働かせたほうがいいですよね。
――働いて、信頼を回復すればいいということですよね。
太田 本当にそうですね。

中小企業は30年続いたら大成功。その先に進むには変化が必要
――インターネットやSNSでの炎上や中傷の問題にも対応されてきましたが、ネットやSNSとはどう向き合っていらっしゃいますか?
太田 以前、私たち夫婦に対する「さすがにこれは放っておけない」っていう誹謗中傷があったんですね。人権侵害だし、それを目にして悲しむ人がいることを言われたから、その時は追いかけましたね。脅迫文まがいのものもありましたけど、そういうことを言うのは、未成年か、そこでしか強いことを言えない人たちなので、そこはしょうがないですね。でも皆さん知っておいてほしいのは、今、全部、開示請求ができるようになっていますから、身元はバレます。
でも、悪い人はインターネットに限らず、世の中にいっぱいいますから。その点、ネット上も悪い人ばかりじゃなくて、SNSを見ていても優しい人はたくさんいて。気遣ってライブの応援や手伝いをしてくださる方がいたり、災害時も、SNSで情報交換ができたり、救出につながったりもしますよね。それはSNSのいいところだなと思います。
――書籍ではタイタンの後継者についての話題もありましたが、創業30年を超えたタイタンという会社が、この先20年後、30年後、どういう会社になってほしいと思いますか?
太田 中小企業って30年続いたら「おめでとう」だから、もう、ここで終わっていいはずなんですよ(笑)。でも、それを乗り越えて次のステップに進んでいくためには、同じことをやっていたらダメなので。大元は変えずに、時代に合わせて形を変えていかないと、続いていかないでしょうね。
――後継者の方に経営権を移行させた後に、太田社長がやりたいことは?
太田 旅行に行きたいです。仕事ではいろんな国には行きましたけど、旅行ではなくて仕事ですから。芸能界にいながらハワイにも行ったことない珍しい社長って、笑われるんですけどね(笑)。でもね、夫がまったく旅行に興味がないんです。ものを作ったり書いたりする人だから、行けば何か得られると思うんですけど、家が好きみたいで。私の家にも勝手に居ついたし、本当に、猫みたいな夫です(笑)。
取材・文=川辺美希 撮影=川口宗道
