彬子女王殿下、待望の新刊エッセイ『飼い犬に腹を噛まれる』が話題!ベストセラー『赤と青のガウン』の、その後の日常を綴る【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/31

飼い犬に腹を噛まれる
飼い犬に腹を噛まれる(彬子女王:著、ほしよりこ:絵/PHP研究所)

 英国留学記『赤と青のガウン』が大ベストセラーとなった彬子女王殿下。文章から滲み出る好奇心旺盛で親しみやすいお人柄に魅せられ、多くの日本人がすっかりファンになってしまった(本の大ヒットを受けて出演された「徹子の部屋」も「オールナイトニッポンPremium」も等身大の親しみやすさがとても素敵だった)。いい意味で私たちの「プリンセス」のイメージをすっかり一新、皇室そのものまでとても身近な存在に感じさせてくれたのは間違いない。

 このほどそんな彬子女王殿下の待望の新刊エッセイ『飼い犬に腹を噛まれる』(PHP研究所)が発売。10日で10万部超のベストセラーとなり、大きな話題となっているのをご存じだろうか。

「え!?」と思うタイトルと「姫はぼくのもの♡」とつぶやくかわいいワンちゃんの絵が目に飛び込んできて、手に取るだけでも思わず笑顔になってしまう本書は、彬子女王殿下が朝日新聞と京都新聞で連載されていた47のエッセイをまとめたもので、ひとつひとつのエッセイには『きょうの猫村さん』で人気のほしよりこ氏の素敵な挿絵がついている。端正なのにどこかユーモラスな文章はさすがの彬子女王殿下。飾らないプリンセスの「日常」にクスッと笑ってほんわかして、ますますファンになってしまうに違いない。

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 ところで気になる本の題は何かというと、収められたエッセイのタイトルからとったもの。実は彬子女王殿下は犬を飼っていて(山陰柴犬の11歳の男の子・左馬助〈さまのすけ〉くん)、ある日、殿下が子犬を抱いているのに嫉妬したためか、リアルに左馬助くんが殿下のお腹を噛むという事件があったというのだ。エッセイ自体は「そのお腹の傷が友人と行った温泉で治って、ますます温泉が好きになった」というもので、「ちょっとお待ちください! それは事件ですよ!!」とこちらが動揺してしまう(笑)。ラストは「友人たちの間では、『飼い犬に腹を噛まれた姫』として有名になりつつあるお話である」と飄々とした彬子女王殿下。添えられたほし氏のワンコ画のかわいさも相まって、思わず笑ってしまう。

 ほかにも側衛さんの話や(特に雨男の側衛さんと晴れ女の殿下が競い合ったエピソードがおかしい)、皇室にまつわるお菓子の話、ラグビーの話やお米の話などなど盛りだくさん。あとがきには彬子女王殿下ご自身が「私は自他共に認める事件体質である。ささいなことから、めまいがするような大事件まで、日常的にいろいろ起こる」と書かれているが、現在京都にもお住まいの殿下の日常は本当に興味深いことだらけだ。ちなみにラジオで「漫画喫茶にも百円ショップにもいきます」とお話しされていたが(いまも放送はSpotifyのポッドキャストで聴けます)、もっともっといろいろお聞きしたくて、本が終わってしまうのがなんとも惜しい。

 巻末には、ほし氏による「絵日記 キャンパスのプリンセスを訪ねて」と、彬子女王殿下とほし氏のスペシャル対談もあり、まさに彬子女王殿下ファン待望の一冊。先ごろ正式に三笠宮家当主を継ぐことが発表された彬子女王殿下だが、この本のような親しみやすい素顔にお変わりないことを願うばかりだ。

文=荒井理恵

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