「京都寺町三条のホームズ」シリーズの特別読本が登場!舞台化脚本のノベライズ、オリジナル四コマ漫画など、ファン待望の一冊【書評】
PR 公開日:2025/11/7

歴史と風情の街、京都。そこを舞台にした作品は数多く存在するが、なかでもいま特に高い人気を集めているのが「京都寺町三条のホームズ」シリーズだろう。
本作の舞台は、寺町三条商店街に佇む骨董品店「蔵」。日々、さまざまな鑑定品が持ち込まれる店だ。それらを鑑定するのは「ホームズ」の愛称で親しまれている京男子の家頭清貴。類稀なる観察眼と推理力によって、美術品や骨董品の真贋のみならず、そこにある謎さえも解き明かしてしまう。そんな清貴とバディを組むのが、アルバイトの真城葵。最初こそ微妙な距離感を保つふたりだが、徐々にその距離を縮めていく。本作は鑑定品にまつわる謎を解くミステリ要素と、清貴と葵の関係を描くラブコメ要素が巧みにブレンドされており、それが幅広い読者の支持を集めている理由だ。
そんな「京都寺町三条のホームズ」シリーズは、10周年を迎えた今年5月に22巻が発売され、また大きな話題となった。最新刊で描かれたのは、清貴と葵の「関係の変化」。きっと多くのファンが待ち望んでいたものの、あまりにも突然の展開だったため、理解が追いつかない…と嬉しい悲鳴を上げた人もいるだろう。
さて、衝撃の22巻からおよそ5カ月。続きを待ちわびるファンのために、シリーズの特別読本が登場した。それが『京都寺町三条のホームズex. 春霞の夜の夢』(望月麻衣:著、秋月壱葉:画/双葉社)だ。
本作の巻頭を飾るのは、「京都寺町三条のホームズ〜春霞の夜の夢〜」という短編。なんとこれは、今年5月に上演された舞台のオリジナル脚本を望月氏自らがノベライズしたものだ。清貴を敬愛し、一方で葵を疎ましく思う滝山利休が「蔵」を訪れるシーンからはじまるストーリーは、遊び心とファンサービス満点! 利休が持ち込んだ謎の薬によって、利休と葵の人格が入れ替わってしまうのだが、そこからの描写がとにかく面白い。しかも、話はそれだけではない。利休と葵以外にも入れ替わりが起こってしまい、もはや事態はとんでもないことになっていく。ちょっとドタバタ要素が多めなので、肩の力を抜いて楽しめるだろう。
さらには、主要人物にスポットライトを当てたショートストーリーも収録されている。清貴や葵のみならず、清貴の宿敵とも言える贋作師・円生や腐れ縁のイケメン俳優・梶原秋人、それから「春霞の夜の夢」で大活躍(?)する利休のショートストーリーも。いずれも、それぞれのキャラクターの魅力が掘り下げられているため、本シリーズファンにとっては垂涎の作品になっているはず。個人的には「残念イケメン」ともいわれる秋人を推しているので、秋人のショートストーリー「俺の初めて聞かせてほしいって?」で描かれるシチュエーションが非常に面白かった。清貴との微妙な関係も浮き彫りになり、読みながら思わず笑ってしまった。
その他、本シリーズのコミカライズを担当してきた秋月壱葉さんによる四コマ漫画や、望月氏と関係が深い人たちとの対談も。さまざまな角度から「京都寺町三条のホームズ」シリーズの世界観を味わい尽くせる本作は、まさにファンを沸かせる、お祭り騒ぎのような一冊だ。
文=イガラシダイ
