第40回「滋賀」日本最大の面積と貯水量を誇る琵琶湖を有する土地の本棚には、どんな本が並んでいるのか?【あの町の本棚】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2025/11/26

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年12月号からの転載です。

今回の舞台は、日本最大の面積と貯水量を誇る琵琶湖を有する「滋賀県」。古くから水とともに生きる文化を育んできた土地で、周囲を見渡してみれば、白鬚神社、比叡山延暦寺、甲賀の里忍術村、彦根城といった、歴史的価値が高いスポットがいくつも存在する。そんな滋賀県に根を下ろす人々は、どんな本を愛読しているのだろうか。

構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー

滋賀県立琵琶湖博物館 館長 亀田佳代子さん

『琵琶湖の魚類図鑑』
『琵琶湖の魚類図鑑』(藤岡康弘、川瀬成吾、田畑諒一:編/サンライズ出版)4400円(税込)

琵琶湖周辺に暮らす魚類85種と貝類、甲殻類各10種について紹介する本格的図鑑。31名の研究者による最新研究成果も盛り込まれており、非常に豪華。「琵琶湖の成り立ちから漁や食文化まで、魚を通して琵琶湖がわかる本です。読み物としても楽しめる一冊」

『せいめいのれきし 改訂版』
『せいめいのれきし 改訂版』(バージニア・リー・バートン:文・絵、いしいももこ:訳、まなべまこと:監修/岩波書店)1870円(税込)

地球が誕生し現在に至るまでを、劇場仕立てで物語る。幾つもの生命の上に私たちの暮らしがあることを感じられるはず。「児童書ですが、地球や生き物の歴史と私たちが繋がっていることを実感できる、何度見ても飽きない一冊。巻末の博物館イラストも必見」

『カワウが森を変える 森林をめぐる鳥と人の環境史』
『カワウが森を変える 森林をめぐる鳥と人の環境史』(亀田佳代子、前迫ゆり、牧野厚史、藤井弘章/京都大学学術出版会)3960円(税込)

地域や時代によって人間との関係が変わる鳥・カワウ。その生態から、人間と動物との関わり方について考える。「害鳥というイメージの強いカワウですが、日本の自然の中で、生き物と人とが多様な関わりの歴史を持つことを教えてくれる鳥でもあります」

[滋賀県立琵琶湖博物館]
〒525-0001 草津市下物町1091 
☎077-568-4811 
HP:https://www.biwahaku.jp
日本最大の湖・琵琶湖につきだした烏丸半島に位置する総合博物館。400万年の長い歴史を持つ古代湖でもある琵琶湖の生い立ちや人々の歴史の展示だけでなく、湖の生き物の水族展示も併せ持ち、五感で琵琶湖を体験することができる。

MiTTS Fine Book Store 店主 細江恵子さん

『ハッピーマムアン 新装版』
『ハッピーマムアン 新装版』(ウィスット・ポンニミット/ハーパーコリンズ・ジャパン)1540円(税込)

みんなを幸せにする女の子マムアンを描いた、ハッピーな4コマ&イラストブック。「悲しいとき、うれしいとき、つらいとき、どうしようもないとき……ページをめくるといつでもマムアンちゃんのあたたかな世界が広がり、そっと寄り添ってくれる、宝物のような本」

『琵琶湖の魚』
『琵琶湖の魚』(今森洋輔/偕成社)2420円(税込)

豊かで美しい生態系が広がる琵琶湖。その環境の多様性を学ぶとともに、守り続けていく意義をも感じさせてくれる一冊。「日本一広い湖、琵琶湖。そこにすむ55種類の魚たちが今森洋輔さんのイラストと文で丁寧に書かれた図鑑のような美しい絵本」

『からだの自然治癒力をひきだす食事と手当て 令和版』
『からだの自然治癒力をひきだす食事と手当て 令和版』(大森一慧/サンマーク出版)2090円(税込)

食べ物が持つ陰と陽の力を知り、体調にあわせて食べる。東洋医学に基づき、無理なく健康に生きるための知恵が満載。「からだのゆがみや不調を自然に自分の力で整える力、身に付けませんか? 目から鱗の知識が満載。身近なもので実践できる、素晴らしい一冊」

[MiTTS Fine Book Store]
〒522-0064 彦根市本町2-2-44 
☎0749-24-2111 
instagram:@mittsfinebookstore
彦根城のそばに位置する新刊書店。展示スペースでは約1カ月単位で原画展や写真展などを開催。11月は『ゆかいようかいノート』(北澤平祐)絵本原画展を実施中。12月以降の展示はInstagramにて告知予定。

SELFBOOKSの皆さん

『はじめてのびわこの魚』
『はじめてのびわこの魚』(黒川琉伊/能美舎)1650円(税込)

幼い頃から琵琶湖に通い続けた14歳の著者による、魚の絵本。琵琶湖に生息する魚たちが躍動的に描かれており、きっと好きになるはず。「琵琶湖に生息する魚たちの生態やその美しさに見入ります。湖魚に対する愛があふれ、琵琶湖への関心が高まる一冊です」(Nami.さん)

『ぼくのがっかりした話』
『ぼくのがっかりした話』(セルジョ・トーファノ:著、橋本勝雄:訳/英明企画編集)1540円(税込)

お伽噺の世界を探検するベンヴェヌート少年。そこで出会うのは、夢のあるお伽噺とはかけ離れた登場人物ばかりだった。「誰もがっかりする本は読みたくないだろう、普通はそうだ。ところが摩訶不思議、この本はがっかりがクセになる」(葵 隆行さん)

『鳥瞰図!』
『鳥瞰図!』(本渡 章/140B)1760円(税込)

高い所から見おろしたように描いた風景図―鳥瞰図の歴史にはじまり、その奥深い世界を紐解いていく一冊。「本書は“読む”ものではなく、鳥になって“飛ぶ”ためにあるのです。ひとまず吉田初三郎の想いを胸に……」(平田幸一さん)

[SELFBOOKS]
〒520-0021大津市二本松1-1
ブランチ大津京内 
☎0742-93-4978 
HP:https://selfbooks.space
ふだんは店員のいない無人書店で、IDナンバーを取得することで入店できる。京都、大阪で古書店を営むスタッフがセレクトした新刊・古本が約2000冊並ぶ。12月には、個性派出版社からの直販やシェア型書店としてリニューアル予定。

あの町と本にまつわるアレコレ

滋賀県はいま最も熱い文芸の地、といえるかもしれない。『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞し、Netflixで間もなく世界独占配信が予定されている「イクサガミ」シリーズも好調な今村翔吾は、滋賀を拠点に活動を続けているひとり。「滋賀の人たちとの縁がなければ、小説家としての今はなかったと思っています」と語っているほどだ。また、大津市在住の宮島未奈も滋賀を盛り上げている小説家。デビュー作となった『成瀬は天下を取りにいく』ではまさに大津を愛する少女・成瀬の姿を描き、大ベストセラーに。続編『成瀬は信じた道をいく』も話題を呼び、成瀬の生き様から、滋賀に興味を持ったという読者も少なくないだろう。

『流浪の月』や『汝、星のごとく』で知られる凪良ゆうも滋賀出身。2度、本屋大賞に輝いたニュースは、滋賀全域を震わせたに違いない。その他、『すべての原付の光』の天沢時生や、『学歴狂の詩』で注目された佐川恭一など、かなり個性的な小説家たちも並ぶ。

滋賀は琵琶湖をはじめとする大自然に恵まれた土地だ。その環境が、ときに優れた小説家を生み出すことにつながっているのだろうか。今後も滋賀に縁を持つ小説家が誕生するのではないかと、期待してやまない。

<第7回に続く>

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