田村淳「武将目線になるとお城観光がより楽しくなるんです」天守に登るだけじゃもったいない! “淳流”お城の歩き方《インタビュー》
PR 公開日:2025/11/21
「足軽の目線」で怖がれる人は城の面白さにハマる!?

――この本は親子で一緒に読めて、子どもだけでなく大人も楽しめると感じました。ちなみに日頃、大人を相手にお城の説明をするときは何か工夫されますか?
田村:大人に説明するときも、基本的に僕は相手を「子ども」だと思っています。(お城に関する)知識のない大人は子どもと条件が一緒ですから、同じように説明していきます。足軽って合戦のときに一番先頭で戦わないといけない兵士なんですけど、身分でいうと(武士の中で)一番最下層だから鎧も薄くて、そんなにいい武器も持っていないんです。それでも一番にお城を攻めなきゃいけないわけで、「あそこから矢が飛んでくる!」とか「ここにいたら串刺しになる!」といった説明にちゃんと怖がれる人は、たぶんお城に興味を持つようになると思います。
――お城の説明をする中で難しいことってどんなことですか?
田村:お城というのは城郭全体を指しますが、みんな天守のことをお城だと勘違いしてるんですよね。それですぐ天守を目指して歩いていっちゃうんですが、それだと美味しいところを全く味わえないんです。だから天守に登ってもただの展望台にしかならなくて「景色が綺麗」みたいな感想しか出てこなくなっちゃう。本来、城は堅牢な防御施設ですから、天守までたどり着くのにどれだけの危ない場所を抜けてくるのかを考えながら進むと、上がったときの景色の受け止め方もまるで違ってくるんですよ。
――ちなみに「一番好きなお城」と聞かれたら、なんと答えますか?
田村:その質問が一番難しいんですよね、お城の何を基準にするかでも違いますし。なので僕は「一番何々が好き」といった質問にはいつも答えないようにしています。どのお城も魅力的なので、どこが一番というのは本当にないんですよ。ただ「最初に観光大使になったのは犬山城で、人生で最初にお城に触れたのが熊本城です」とは答えられます。

――すごく誠実な回答だと思います。
田村:実は犬山城については、すこし信じがたいようなエピソードがあって。ある時「よくみえる」と評判の占い師の人にみてもらったら、「淳さんの後ろにお侍さんみたいな人がいる」って言われたことがあるんです。「それって戦国武将ですか?」って聞いたら、「私、全然そういうの詳しくないからわからないけど、織田家の家臣の人っぽい」と言われて、「じゃあ、○○ですか」って名前を挙げていったら「池田恒興」の名を出した時に、僕と占い師さんに同時に鳥肌がたったんですよ。実は池田恒興って犬山城の城主を一時していたんですよ。その時、僕はすでに犬山城の観光大使だったので、「だから導かれたのかな?」って思いました。
――なんと!
田村:ただ単純に「現存する天守が日本最古」だということで犬山城には惹かれていたんですけどね。犬山城って名古屋城や大阪城に比べると全然ちっちゃいお城なのに、なぜ残り続けたのか考えると面白いんですよ。天守に登ると、右に岐阜城が見えて、ど真ん中に名古屋城が見えて、左には小牧山城が見えるから、大群がやってくるのも見えたはずで、だから白旗をずっと上げ続けてきたんじゃないかっていう。諸説ありますが、この説が僕は一番好きです。結局争わないのが一番平和を保てるし、防御施設なのに防御してこなかったという点も興味深くて。たぶん戦いはあったんでしょうけど、この城じゃ戦いきれないからすぐ白旗を上げるくらいのサイズなんですよね、あの小ささが良かったんです。
――なるほど。当時の目線で考えるといろいろ見えることがありますね。
田村:「自分が武将だったら」という目線になると「この城では自分の部下を守りきれない」といったような思いを馳せることができるんで、ある程度の前情報があれば城はより楽しめます。最近は外国人の観光客も増えましたけど、みんなすぐ天守に行っちゃって、面白さがあんまり伝わっていない気がするんで、本当のお城の楽しみ方を伝えていきたいですね。
――お城の観光大使の活動としてはどんなことをされるんですか?
田村:お城に特化した情報発信をメディアを通じて行うことです。そこで、ことあるごとに「何城のココがいいです」といった内容を僕なりに発信しています。それと講演会ですね。「このお城はこうやって面白がるんですよ」という話をしています。講演会には、毎回地元の人が400〜500人来てくださるんですが、外から来た僕が地元の城の観光大使をやることに不信感を抱く人もいると思うんで、話の前に「不信感がある人はいますか?」と訊くと、やっぱりパラパラと手が挙がるんです。でも講演会が終わって「僕がこのお城の観光大使に相応しくないと思う人がいたら、手を挙げてください」って訊くと一人も手が挙がらないし、「認めてくれたら拍手してください」って言うとバーッと拍手が起こります。
