15分以内に食事を終える人は要注意!? 外科医・小林順二郎によるヘルスケア本『血管年齢』で生活習慣を見直す【書評】

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公開日:2025/11/20

血管年齢
血管年齢(小林 順二郎/文藝春秋)

 『血管年齢』(小林 順二郎/文藝春秋)は、心臓血管外科の医師が血管の健康維持について解説した一冊である。

 人々が長く健康に生きるうえで、血管のケアは特に重要だ。とはいえ目には見えない部位なので、具体的にどうすればいいのか想像がつかない人も多いのではないだろうか。本書では、健やかな血管を維持するのに有効な生活習慣や食事について解説されており、すぐに実践しやすいノウハウが詰まっている。また、逆に血管をおろそかにするとどのようなリスクが増えるのかも知ることができる。

 本書の冒頭で突きつけられるのは、「一度劣化した血管は元に戻らない」という厳しい現実だ。動脈硬化が進んだり、血管が狭くなってしまったりしたあと、たとえケアに努めても元の状態まで改善する可能性は低い。40年以上心臓外科医として働いてきた著者は、実際の手術でさまざまな血管を見てきたこと、そして弱った血管は手術をしづらいという本音を章末コラムで明かしている。そこに綴られた「血管を見れば、その人の人生がわかる」という言葉は、読者の胸に刺さるのではないだろうか。

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 喫煙、糖尿病、高脂血症。これらは血管年齢を高める危険因子として紹介される。また、日ごろのストレスも血管に悪影響を及ぼすそうだ。言わずもがなと感じるかもしれないが、なぜ危険なのか、どんな影響が及ぶのかまで解説を読んでいくと、漠然とした「よくない」という感覚が現実味を帯びてくる。

 本書の中盤には、「血管年齢チェックシート」も付属している。チェック項目に振り分けられた点数を加算していくと、自分の血管年齢がわかる。私も実際に試してみたところ、何げなく続けている生活習慣も、意外と血管の老化を進める要因になっていることがわかった。「15分以内に食事を終える」「一日に二杯以上味噌汁を飲む」など当てはまる方もいるのではないだろうか。このチェックシートに取り組むだけでも、見直すべき生活習慣を把握できるので、意識変化につながるだろう。

 また、食事の具体的なアドバイスが書かれているのもありがたい。広義の健康食ではなく、血管年齢に影響をもたらす食材やメニューに絞って解説されているので、意識して実生活に取り入れやすい。例えば抗酸化作用を持つポリフェノールを吸収するには、赤ワインが一番いいとのことだ。高脂肪食が主のフランス人が心臓病になりにくいのも、赤ワインのおかげなのだという。食事を食べる頻度や量、塩分へのケアなど、食材のほかの要因にも触れられているので、健康な食生活について具体的な計画を立てやすい。

 最終章の「理想の生活」も実践的な内容だった。血管の健康を考えたときに理想的な一日の過ごし方、年代別で考える血管ケアの最適な手段、そして季節ごとの血管ケアなど、切り口を変えながら生活で心がける対策ポイントを解説している。これからの冬の季節、特に重要なのはヒートショック対策だ。急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞を引き起こしてしまった患者もいるという。

 本書を読んで、あらためて血管の健康維持の重要性を感じると共に、積み重ねた生活習慣が体の健康状態を左右するのだということを痛感した。異変に気づいて対処し始めたときには、もう遅いというパターンも十分にあり得る。年齢を問わず自分らしく生き続けられるように、自分なりに血管に良い生活習慣を取り入れていこうと思った。

文=宿木雪樹

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