『ノラネコぐんだん はるなつあきふゆ』で楽しく学ぶ四季の世界。お受験本の前に読むのも◎【書評】
更新日:2025/12/8

子どもの成長は早く、親が手取り足取り物事を教える時期はそう長くありません。限られた年月の中で、わが子の思い出を少しでも多く作っていきたい。そう感じるなら、季節の行事をたしなむのも一つだと思います。
今はお受験にも出題される季節の行事。図鑑などの書籍もたくさん出ていますが、小さな子どもと一緒に読むなら『ノラネコぐんだん はるなつあきふゆ』(白泉社)がおすすめ。年中行事や風習が写真とイラストでわかりやすく紹介され、可愛いキャラクターとともに学べる歳時記です。
ノラネコたちと一緒に『はるなつあきふゆ』を楽しく学ぶ

1月1日は、お正月。おせちの前で舌なめずりをするノラネコたちは、みんなで仲良く食事を楽しんだようです。お正月の遊びでは、かるたを囲む8匹のノラネコたちが楽しそう。真剣な顔で前に乗り出し、いつもの悪だくみはお休み中!?
7日には、七草粥。どうしてこの時期なのか、意外と知らない人もいるのでは? 本の中には、せりやなずなの絵とともに「ご馳走たくさん食べちゃった。七草粥でひとやすみ」と書かれています。おせちを食べ過ぎた後はお腹もお休み。最近は便利な七草粥セットも手に入るので、食育にも良さそうですね。それにしても、作者の工藤ノリコさんがこまやかに描く食べものはいつも美味しそう。
この時期にあちこちで見かける門松や鏡餅も、子どもは見慣れなくて気になっているはず。この本があれば「よい年になるように願いを込めているんだって」と飾り物の意味をきちんと伝えることができます。ノラネコたちと一緒に学べるから子どもがより身近なものに感じてくれそうです。
季節の移ろいをわが子と学びながら感じる「ともに生きている」という実感

6月は、梅雨。「ぽつぽつ しとしと ざあざあ あめのおとはどんなおと?」と、雨にもいろんな音があることを教えてくれます。毎日降りつづけて鬱陶しく感じる雨も、ノラネコたちの手にかかれば楽しい遊び。きっと子どもたちも同じ気持ちなのだと思います。その願望を叶えて外にお出かけもいいですね。
雨の中を歩けば、あじさいのそばでかえるやかたつむりに出会えることも。「おひさまにあいたくなったら」てるてるぼうずを吊すのも子どもにとっては楽しいもの。好きなものがたくさん登場するので、ワクワクしながら読み進められるはずです。
さらにこの時期は、恵みの雨を受けた農作物が夏に向けて大きく育つ頃。ノラネコたちが過ごす日々の中には、季節の移ろいがしっかりと感じられます。四季折々の行事や風習にはきちんと意味があり、一つひとつを大切に味わうことで、より濃厚な毎日を過ごせることが伝わってきました。
来年はこれもあれも試してみたい。ノラネコたちにわが子の姿が重なり、春夏秋冬を楽しむ表情を思い浮かべて愛おしくなりました。行事を通してこれからの健康や幸せを願いながら、「ともに生きているんだ」という今の喜びを噛み締めていきたいですね。
文=吉田あき
