井上咲楽の旅ごはんエッセイ「おいしい思い出」#1 遅く起きた朝に、ベルリンの朝ご飯

文芸・カルチャー

公開日:2026/1/23

続いてブランデンブルク門へ。所詮ミーハーな観光客なのでど真ん中観光スポットのここで写真を撮りたい。門は大きくて、一度は行く価値がある。大きいな――と思えるのでおすすめ。

門の前には、昨日のベルリンマラソンのメダルを掲げて写真を撮る人で溢れていた。会場で買ったベルリンマラソン限定の服を着ている人もたくさんいて、これは門の前に限ったことではない。街中にメダルを掲げた人が溢れていて、なんなら収容所でもメダルを掲げている人がいた。もちろん彼らも真剣に見学はしていたが…こんなにメダルを掲げている人がいるってことは何かメダルを掲げるメリットでもあるのだろうか?日本だとそういう人はあまり見かけないので不思議に思った。走れたことを誇りに思っている証なのだろうか?気になる。

続いて、「虐殺されたヨーロッパユダヤ人のための記念碑」へ。通称、ホロコースト記念碑と呼ばれる。ここはサッカー場2面分の広さがあり、2,711本のコンクリート製の柱が格子状に並んでいる。とても広い場所に並ぶたくさんの灰色の石碑。この石碑の間を歩くことができる
大小様々の石碑の間を歩いているうちに、いつの間にかとても高い石碑に覆われて、石碑が迫ってくるような、空虚で冷たいけれど威圧感と、冷酷な生を感じるような、早くここから逃げたいという気持ちに駆られる。石畳も平行ではなく、斜めになっていたり、不安定な作りになっていてそれによって煽られる気持ちもあった。

当時の人たちはどんな恐怖に包まれていたのだろう。石の間で鬼ごっこをする子供たちもいた。突然出てくるので危ないなと思いつつも、あれくらい小さい子供の石碑もあるんだろうなと思ってウッとした気持ちになった。外に出られた時は、ほっとした。明らかに異様な空間だった。夜のホロコースト記念碑はなかなかヘビーだった。

 
記念碑を後にして、夜ごはんを食べに行く。オシャレなアディダスの人のインスタに載っていたお店を真似して行ってみることにした。ただ、19時半くらいになっていて、なかなかいい時間だ。店が混んでいた場合、また違う店を探すのも面倒だ。

ご飯難民になって余計な疲労が溜まるのも嫌だったので、思い切って店に電話をかけて予約を取ってみることにした。ちなみに私は英語力はほぼなく、翻訳アプリとchatGPTに頼って海外旅行をしている。会話の埒が明かなくなったらスマホの翻訳画面を見せて、それでなんとかなっているのだが、電話だと画面を見せることができず声だけのコミュニケーションになるのでハードルが高く、今まで一度も電話予約をしたことがなかった。ただ予約ができるようになったら便利になるのは間違いない。

ぷるるる〜と電話をかける。「Hi!」と店員さんがご機嫌に出てくれた。「ハイ! Can I make a reservation?」とドキドキしながら聞く。伝わっているのか、これで合っているのか…と待っていたら、「何時?」と聞かれた。ほっとして、「今夜の9時」と伝える。確認するから待っててください。と言われた気がして、しばらく電話を繋いだまま待つ。すると、店員さんが戻ってきて、「オッケー!」と言ってくれた。やった!やった〜!

と思ったのも束の間のことで、「シェフのキッチンと○とどちらがいいか?」とメニューを聞かれたが、全く聞き取れず、「こちらは夜ご飯が食べたい」と伝えると、オッケー!と言われて電話は終わった。最後だけ心配だが、なんとか予約は取れたようなので、ゆっくりと店に向かう。店の近くのスーパーで知人から頼まれていたチョコマシュマロを買う。スーパーで売っている肉も野菜もゴツゴツしていて、見たことないものがたくさんあって、料理がしたくなった。

さて、時間になったので店に向かう。ドキドキしながら、「I have a reserbation under Sakura」とネットに落ちていた英語をそのまま伝えると…予約が取れていた!!よかった!この店はバーとレストランと、両方が併設されていて、電話でどちらがいいか聞かれたのはこのことだったっぽい。

洒落た店内に案内される。黒いTシャツを着たシェフがご機嫌に釜の前に立っていて、小躍りしながら料理をしていた。可愛らしいドイツのビールを飲む。タコのグリルがめちゃくちゃ美味しかった。今回はマネージャーさんも一緒にいたので、レストランに心置きなく入れること、色々頼めるところが嬉しいと思った。

店員さんに日本から来たと伝えると、少し考えて「アリガトウ」と伝えてくれた。知っている日本語を頑張って伝えてくれたのだと思う。嬉しかった。ほろ酔いでホテル着。チェックインして、シャワーを浴びて寝た。

お料理レシピ:ベルリンのホテルの朝食バイキングで食べたじゃがいものマリネ

■材料
じゃがいも2こ
お酢 大さじ1
さとう 小さじ1
塩 小さじ2分の1
オリーブオイル 小さじ1
ローズマリー

■調理方法
①じゃがいもを茹でる
②別の容器に調味料を入れて混ぜておく
③茹で上がったじゃがいもと調味料、ローズマリーを混ぜて完成

<第2回に続く>

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井上咲楽(いのうえ・さくら) 1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。ABC「新婚さんいらっしゃい!」NHK「サイエンスZERO」ではMCを務め、バラエティ番組を中心に活躍中。2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』、11月に『じんせい手帖』、2025年10月には『井上咲楽の発酵、きょう何作る?何食べる?』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。