秀長は本当にケチだった!? 大河ドラマ「豊臣兄弟!」の予習に最適。家系図から「本能寺の変」の黒幕説一覧まで、情報たっぷりのガイド本【書評】
PR 公開日:2025/12/21

2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』を120%楽しめる書籍として、『豊臣秀吉と秀長 完全ガイド』(中央公論新社)をおすすめしたい。
『豊臣兄弟!』は仲野太賀さん演じる秀長(秀吉の弟)と、池松壮亮さん演じる秀吉がメインで活躍する「強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた兄弟」の物語だ。
そんな『豊臣兄弟!』が始まる前に(放送中でも!)、「ご飯のお供」ならぬ「ドラマのお供」にしたいのが本書。
全ページカラー、A4に近いサイズの見やすい大きさで、合戦の布陣鳥瞰図や図解、当時の絵巻物や武将直筆書状の画像、現在の史跡の写真などなど、豊富なビジュアルが満載の一冊である。
内容は、当時の情勢を理解する上で必要な基礎知識から、歴史好きのための最新研究といった、ドラマを楽しみたいライト勢から、コアな歴史ファンまで楽しめるような読みごたえ抜群の中身となっている。
いくつか個人的に「これは!」と感じたおすすめポイントをご紹介したい。
おすすめポイント≪1≫ 3Dソフトを使用して作られた布陣図

合戦というものは、「地形」が重要だったりする。
当時の人が何故ここに陣を置いたのか、この場所に城を築いたのかなどは、山や川の地形が分かると、理解が深まる場合が多いからだ。
本書では、3Dの地形まで分かる布陣図を掲載している合戦もあったので、より具体的に戦場のイメージを持つことが出来た。
(現在の地図を基にしているため、当時と全く同じではない可能性があるようだが、平面の地図よりも臨場感があった)。
おすすめポイント≪2≫ A4版見開きビッグサイズの家系図

豊臣兄弟に関係する人々の家系図(関係図)が掲載されているのだが、秀吉の家臣は親類縁者が多く、こういった図があると人物相関が非常に分かりやすくありがたい。ドラマを観ている時に「この人って秀吉の姉の息子だっけ?」など、分からなくなった際はこのページを開けば一発で解決だ。
おすすめポイント≪3≫ 秀長の人間性 「秀長はケチだった!?」
秀長は亡くなった際、居城の郡山城に莫大な財産が遺されていたことなどから、蓄財に熱心な「守銭奴」というイメージを持たれることが多い。
実際はどうだったのだろうか。そのイメージに大きく関係してくるのが、「奈良貸(ならかし)」という賛否分かれる金融政策なのだが、そういった側面からも秀長の人物像を検証している。
おすすめポイント≪4≫ 「本能寺の変」≪黒幕説≫一覧

織田信長が明智光秀によって討たれた「本能寺の変」には、光秀の行動原理が明確ではないことや、あまりにも「突然の出来事」であったため、多くの≪黒幕説≫が存在する。
その中の一人が、秀吉である。秀吉は光秀と密約を結んでおり、その上で光秀を裏切ったのか。他には「四国・長宗我部説」、「将軍・足利義昭説」、「宣教師イエズス会説」などもある。
こんな風に、これまで囁かれてきた説が一挙にまとめられているのも、網羅的な情報好きには楽しめる誌面だった。真相は闇の中だが、さまざまな「If」を想像できるのも、歴史の面白いところではないだろうか。
他にも「本能寺の変」前後で、影響を受けた女性達の動き(状況)や、秀吉の正妻・北政所(ねね)の最新研究を含めた紹介など、あまり史料の残っていない女性にもフォーカスされている内容が多いように感じ、面白く読ませてもらった。
満載の情報量と、臨場感ある「分かりやすさ」に、大満足な一冊だったと思う。
文=雨野裾
