生地はまぜすぎてもOK! 失敗しないレシピでシフォンケーキを作ってみた。バスクチーズケーキやストロベリーショートケーキもシフォン型1つあればできちゃう【書評】
公開日:2025/12/29

シフォンやスポンジ、バスクチーズケーキにシュトーレン…。味はもちろん、形もいろいろなのがお菓子作りの楽しさ。同時に、どれも形が違うからこそ「型がないと作れない」のが悩ましいところ。でも、レシピ本『江口和明のだけじゃないシフォン』(江口和明/主婦の友社)があれば、直径17cmのシフォン型1つでこれらのお菓子がぜんぶ作れちゃいます。

江口さんは、お菓子好きの間で有名なパティスリー&カフェDEL'IMMOのシェフパティシエ/ショコラティエ。本書には、熱が通りやすいシフォン型を使って、失敗しにくく、さらにおいしく仕上がるお菓子作りのコツが紹介されています。

「まぜすぎてもOK」失敗しないシフォンケーキ


1つ目に作ったのは「基本のプレーンシフォンケーキ」です。ショコラティエでもある江口さんのシフォンは、チョコレートを入れるのが特徴。その代わり、油を使いません。
また、お菓子作りが難しいとよく言われるのは、材料をまぜるタイミングやまぜ具合、温度などによって「膨らまない」「ダマができる」などの失敗が多いからではないでしょうか。この部分も、本書ではしっかり言及されています。

まず、粉は3回ふるいました。こうすると、複数の粉がしっかりまざるそうです。すぐに終わる工程なので、そんなに面倒ではありませんでした。

それから、砂糖は一気に加えてOK。一気に加えたほうが卵白と糖が結合しやすく、きめ細かいメレンゲになるそうです。

オーブンの予熱は「10度」上げておくのがポイント。オーブンの扉を開ける時に温度が下がってしまうからです。生地が膨らむ温度をきっちり守るためのコツなのだそう。

そして、シフォン作りが初めての私にも心強かったのが、「生地はまぜすぎてもOK」というルール。シフォンなどの柔らかいケーキは「まぜすぎると空気がつぶれそう」と心配ですよね。ところが、まぜ足りないよりも成功率が高まるそうで、まぜている時の安心感が違いました。まぜすぎても失敗がないように配合が工夫されているそうです。

やらなくてもいいことはやらない。僕のお菓子作りは、そこに大きなポイントがあります。
できあがったシフォンケーキは、ふわっふわ。チョコレートのコクもあり、お店のような仕上がり。あまりにもスムーズに完成したので、「お菓子作りってこんなに簡単だった…?」と拍子抜けするほどでした。江口さんが語るコツを押さえたことで、生地が均一にまざり、きめ細かくなったのだと思います。
シフォン型だからこそ失敗しにくく、おいしい「ちぎりパン」


さて、2品目に作ったのは「基本のチョコちぎりパン」です。シフォンケーキ以外にもいろいろ作れるという“だけじゃないシフォン”の本領発揮です。江口さんによれば、シフォン型でパンを作ると、成形しなくても形が崩れにくく、中心からも熱が入るので生焼けの心配がないのだそう。

江口さん流のポイントは、生クリームを加えてしっとりさせた生地と、中にチョコをひそませたとろ〜り甘い仕上がり。生地を6つに分け、丸めて並べたのですが、コロンとした形が可愛いすぎます…。初めてのパン作りですが、発酵でしっかりと膨らんでくれました。


仕上がりは、しっかりと火が通り、ふっくらこんがり。作り始めはレシピの工程の多さに不安を感じましたが、よく見ると、それだけ工程が細かく書かれているんです。「イーストに塩が触れるとふくらみが悪くなるため、先に砂糖とまぜておく」などのノウハウも紹介されているので、「なるほど」と納得した上で実行できます。「やるべきこと」と「やらないでいいこと」がしっかりわかる親切さ。これなら誰でもうまく作れる! と太鼓判を押したいです。
シフォン型とこの本さえあれば…! お菓子作りのハードルを下げる本



一流パティシエ兼ショコラティエのレシピ本というと、レベルが高いと想像するかもしれませんが、本書はお菓子作りのハードルがとんでもなく下がるアイデアを紹介した1冊です。これまで「シフォンしか作れない」と思われてきたシフォン型の可能性を広げながら、極めに極めた、入門者にもやさしい失敗しないレシピを教えてくれます。
心が踊るようなレシピは種類豊富で、小麦粉やグラニュー糖を使いたくない人には米粉やきび砂糖のレシピも参考になりそう。おしゃれなラッピングのアイデアもあり、手作りお菓子のプレゼントも叶います(今回作ったシフォンとパンは家族3人であっという間になくなりましたが)。
直径17cmのシフォン型と、この本さえあれば…! お菓子作りが初めての人も、難しいと感じている人も、もっと気軽にお菓子作りを楽しめるようになるはずです。
調理・写真・文=吉田あき
