第13回MOE創作絵本グランプリ作品。初舞台で「うまくいかなかったら…」と不安な子どもにママが伝えた言葉は? 絵画のような絵柄も堪能できる1冊【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2026/1/14

シャボンだまサーカス
シャボンだまサーカス(吉田のばら/白泉社)

 保育園や幼稚園、習い事の発表会など、どんな子もいずれは経験する“初舞台”。緊張するかどうかはその子次第ですが、全力で応援したいのが親心です。『シャボンだまサーカス』(吉田のばら/白泉社)は、サーカスの玉乗りに奮闘するクマのぼうやのお話。絵画のようなタッチで描かれた鮮やかな絵柄を楽しみながら、初舞台に立つ子どもにエールをおくることもできる絵本です。

クマのぼうやが玉乗りの練習をしていたら…?

 初舞台を前に、ママと一緒に玉乗りの練習をするクマのぼうや。ところが、雪が降り始めると、クマのぼうやが玉の上でツルリンところんでしまいます。せっかくの初舞台で雪が降ったら玉乗りができない…と困ってしまうパパ。そんな時、ぼうやが上手に吹いたシャボンだまを見たパパは、大きなシャボンだまの中でサーカスをすれば雪が降っても大丈夫だと思いつくのでした。

初めての舞台で不安になるのはみんな同じ

 ぼうやはサーカス団のみんなと一緒にシャボンだま作りに奔走します。巨大なシャボンだまの輪っかを抱える動物たち、そこに長い鼻で風を送るゾウさん…。途中で失敗もしますが、なんのその。新たなアイデアを出し合い、みんなで力を合わせます。

advertisement

 印象に残ったのは、団員たちの楽しそうな笑顔でした。初めての舞台では「失敗したらどうしよう」「みんなを困らせてしまうかも」と不安になるもの。でも、それは誰もが通る道であり、うまくいった先にはやり遂げた喜びが待っている——。それをひと足先に体験している先輩団員たちが、「失敗しても気にすることはない」という温かい気持ちでぼうやを見守っているようにも見えました。

 さらに本番前、ぼうやの背中を押したのはママのひと言でした。ママにも初めての舞台を踏んだ時があったのです。ママが自分と同じような気持ちになったことがあると知り、安心したような笑顔で玉乗りを披露するぼうや。その表情は自信に満ちあふれており、読者であるママやパパはわが子を重ね合わせてホロリとくるかもしれません…。

性格も好きなことも違う仲間が集まるサーカスで“好きなこと”を探してみよう

 サーカスを通して、初舞台に立つ時の心の持ちようや、やり遂げることの喜びを教えてくれる本作。一児の母でもある作者の吉田のばらさんは、本作で第13回MOE創作絵本グランプリを受賞。いつかやってくるお子さんの初舞台の背中を押すような気持ちで制作に向かったそうです。

 横長の本を開いた途端にひろがる色鮮やかなファンタジーの世界にはうっとりするばかり。ページの隅々までディテールが書き込まれており、じっくり眺めていたらあっという間に時間が過ぎてしまいます。ぼうやを取り巻く仲間たちのやさしさ、サーカスの楽しさがしっかりと伝わってきました。

 ぼうやの玉乗りのほかに、楽器の演奏や団員たちの食事作りなど、仲間たちが自分の得意なことを生かしながら役割を果たす姿も印象に残りました。さまざまな動物たちがいるサーカスは子どもたちがこれから巣立っていく社会そのもの。性格も好きなことも違う仲間たちの中で、自分にできるとしたらどんなことだろう…と“好きなこと”を探すきっかけにもなるかもしれません。

文=吉田あき

あわせて読みたい