7年前に亡くなった初恋の幼馴染が、生きた同級生の体の中に? 「小説現代長編新人賞・選考委員特別賞」のタイムリミット・ラブストーリー

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/2/11

梅咲く頃にまた会おう
梅咲く頃にまた会おう(迂回ひなた/講談社)

 人生は、いつまで続くか分からない。そして必ず終わりがくる。だからこそ、生きている今を大切にしなくては。読後、そんな風に感じさせてくれるのが『梅咲く頃にまた会おう』(迂回ひなた/講談社)である。

 大学生の若梅(わかうめ)は、生真面目で優しい20歳の男性だ。

 夏休み、いわゆる「陽キャ」の同級生たちが、自分の地元の心霊スポットである廃病院へ行こうとしているのを知り、同行を申し出る。普段なら、そういった不謹慎なお遊びなどしない彼だが、今回ばかりは絶対に行かなければならない理由があった。

 7年前に亡くなった初恋のあの子、――小梅(こうめ)が、幽霊となった今もその廃病院をさまよっているという噂を聞いたからだ。

 いざ廃病院へ行くと、そこには本当に小梅の幽霊がおり、しかも大学の同級生の牧りりあの身体に入ってしまうという異常事態に。だが小梅は13歳の頃と変わらない明るさで、若梅に接する。りりあの身体を乗っ取る形になってしまったのも本人の意志ではなく、小梅自身も原因が分からないのだとか。

 突然の出来事に、若梅も小梅も困惑しつつ、元に戻るまで「二人だけの秘密の夏休み」を過ごすことになる。

 第19回小説現代長編新人賞の選考委員特別賞を受賞した本作。

 一気読みしてしまった。幽霊と人間の「タイムリミットのあるラブストーリー」なので、ラストは「別れ」と決まっているはずなのに、この二人が健気で愛おしく、続きが読みたすぎて、怒涛の勢いでページをめくってしまった。

 本作は、青春の淡いラブストーリーが展開されながらも、常に「闇」がつきまとっている。

 故意ではないものの、小梅は牧りりあの身体を乗っ取り生活しているため、りりあの時間を奪っている罪悪感や、別人格の自分が勝手な行動をすることで、彼女の大切な人間関係を壊してしまったらどうしようと、恐怖心を抱いている。

 若梅の方も、最初から「いつかりりあに身体を返す」ことを前提に、小梅と過ごしている。真面目で優しい二人は、常にりりあのことを想い、これ以上彼女の迷惑にならないよう、細心の注意を払っているのだ。

 だが一方で、幼い頃から重い病気だった小梅にとって、健康なりりあの身体は、欲しくて欲しくて仕方がないものだった。

 その元気な身体で、大好きな若梅とスーパーで買い物をしたり、オセロで遊んだり、お祭りに行ったり、そんな「些細な日常」が、小梅にとってどれほどかけがえのない時間だったか。

「ずっとこの日々が続けばいい」と思う反面、それはりりあに「消えてくれ」と言っているようなもので――。

 本作は、「青春」「初恋」と「罪悪感」「病」「死」といった相反する要素が、コインの裏と表のように、同じ紙面に、常に存在している。このジレンマが、読者を狂おしいほど夢中にさせるのではないだろうか。

 ちなみに「ラストは別れと決まっている」と書いたが、それはそうなのだが、実は……。最後まで見逃せない感動の展開になっているので、楽しみに読んでみてほしい。

梅の実を結ぶために花は散るのだ。思いはつながっていく。

文=雨野裾

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