室井滋、6匹の愛しい猫たちを見送って「ハエや蚊も、チビの生まれ変わりだと思っちゃうの」《インタビュー》
公開日:2026/1/29
猫たちはまだ死んでいない

――なりゆきでなった猫飼いですが、室井さんご自身が猫を受け止められるタイミングだったんでしょうか?
室井:チビと出会ったときはとにかくものすごく忙しかったので、最初は他に飼い主を探してたんですね。でもすごい猫好きのうちのおばさん社長から「アンタ飼いなさい」って言われて。「無理。そしたら女優やめなきゃいけない」って答えたら、「なら女優やめなさい」って言われて「えー」ってなってたんですが、結局、3日一緒にいたらものすごく可愛くなっちゃってあげられなくなりました。当時は仕事もありましたけど、やっぱり自分が遊ぶことにも忙しかったんですよね。飲みに、雀荘に、釣りにすごく激しく動いていたんですけど、猫が来てガラッと変わりました。
――そういう変化は嫌じゃなかったのでしょうか?
室井:嫌じゃなかった。その頃は小型船舶一級の免許を取って、休みのたびに真夜中に車で海に出掛けて行って、自分で操船して釣りもしてたんです。チビを飼い始めたのが1999年で、ちょうど2000年になるミレニアムのカウントダウンには、横浜の氷川丸のあたりに船が集まってみんなで汽笛を鳴らして乾杯するイベントがあって、私も自分の船に友人を誘って大はしゃぎしてたんです。そしたら汽笛が怖かったのか、オーナーズルームに入れていたチビがカニみたいに泡吹いてしまって。「降ろして!」って半狂乱で家に帰って、それで「もうやめよう」って船も売りました。気がついたらそのぐらい「かけがえのないもの」になっちゃってたわけです。
――猫と一緒に暮らした一番の影響ってどんな点だと思いますか?
室井:私にとって、彼らは猫の形はしているけど、猫じゃなかったんだと思うんですよ。どの子ともしっかりしたコミュニケーションが取れるから、ずっと喋ってましたし。そして彼らがいなくなった今でも、やっぱりみんなに「行ってくるからね」とか「ただいま。どうしてた?」とか、話しかけています。
ときどきお世話になった動物病院から「すっごく可愛い赤トラを見に来ませんか?」と連絡が来るんですけど、今はまだいいやって。抑えていたものがなんかガラガラ崩れそうな気もするし、自分でも怖いんですよ。もちろん撮影で猫を抱っこしたりなんてことはありますけど、連れて帰りたくなる気持ちを抑えてます。
――本を書いたことで何か心境に変わったことはありますか?
室井:やっぱり私にとって彼らは死んでいないんだと思うんです。実は(猫についての)絵本も書いていて、それを朗読したりするとそのたびに胸がいっぱいになって泣いちゃうんですけど、やっぱり死んでいないんです。チビは特にですが、どの猫も猫じゃなかったんじゃないかと思うし、もしかしたら毛の生えた宇宙人だったかも。ならば今もその辺にいるわね(笑)。
――この本を書き上げて、猫ちゃんたちは何て言ってくれていると思いますか?
室井:書きながら、一緒にいた頃のことを思い出して、あの時はこうだった、こういう感情だったってもう1回自分の中で再現していくわけですけど、猫たちも私の姿に「なんか思い出してるな」って感じてたんじゃないかな。「忘れてないよ」って思ってくれてたり、もしかすると「いつまでもそんなこと言ってんじゃねえよ!」って思ったりしてるかもしれないですけど、間違いなくそばで様子を見てたろうなって思います。って、今も見てるんですけどね。
――なんか室井さんの足元にいっぱい猫ちゃんたちが並んでる絵が浮かびました。
室井:「ペットロス」って言葉がありますけど、私もそうなのかなぁ? じゃあこの先自分はどういうふうにやっていこうか? って考えることがある。このまま飼わないかもしれないし、沢山飼うかもしれない、それは本当にわからない。でも、あの子たちは今も気がついたらいつの間にか横にいますからね。それはそれです。
よく墓参りに行ったらそこに出てくる虫も殺しちゃいけないって言いますけど、私はハエや蚊が来ても「もしかしたらチビなの?」って思っちゃって。ゴキブリもチビなんじゃないのと。「(チビに)もうちょっと修行して違うものになってくれる?」って(笑)。逆に猫たちも虫や蝶々になって「これは気づいたかな?」なんて思っているかもしれません。
取材・文=荒井理恵 撮影=中惠美子
