はじめて見る外の世界は…『ホッキョクグマのプック』 【NEXTプラチナブック】
公開日:2023/3/21

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!
寒い寒い冬の日、小さなホッキョクグマの赤ちゃんが生まれます。おかあさんはプックと名付け、大切に育てます……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『ホッキョクグマのプック』。アラスカで暮らす作家が出会った野生動物のおはなし、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
はじめて見る外の世界は…『ホッキョクグマのプック』
ホッキョクグマのプック
作・絵:あずみ虫
みどころ
さむい冬のある日。カナダの北極地方で生まれたのは、小さなホッキョクグマのあかちゃん。あかちゃんの名前は、プック。プックは、安全な巣穴の中でおかあさんと一緒にすくすくと育っていきました。冬が終わる頃、少し大きくなったプックは、初めて巣穴の外に出ます。
「うわぁー-ー!」
まぶしい太陽の光に思わずつむった目をゆっくりあけてみると、そこにあるのは、見たことのないものばかり。初めて出会う動物たちに挨拶をすると、おかあさんが大好きなプックは、おかあさんと同じようにのびをしたり、毛づくろいをしたり、お腹を雪につけて体を冷やしたり。ところがある日、おかあさんは鼻を空高くあげてクンクンとにおいをかぎ、厳しい表情になります。プックも真似をしてみると……。

生まれたばかりの赤ちゃんプックは、まだ目を閉じたまま。歯はまだ一本もはえていません。

やがて冬が終わる頃、プックはいよいよ外の世界へ。
「そとって どんな ところだろう?」
雪と氷におおわれた広い景色の中で、おかあさんと一緒にのびのびと動きまわるホッキョクグマのあかちゃんプック。その姿の可愛らしいことと言ったら! 一方で、時折みせるおかあさんグマの緊迫感やプックの心もとない存在感もしっかりと伝わってきます。それもそのはず、作者はアラスカに滞在して制作をされているというあずみ虫さん。実際にホッキョクグマの親子にも出会ったのだそう。
おかあさんの大きな愛情に包まれて幸せそうなプック、危険が近づいてブルブルと震えるプック。そして、まるで空がおどっているような美しさを見せるオーロラとの出会い。どの姿も愛おしく、ホッキョクグマへの愛情が自然と生まれてくるのです。アルミの金属板を使って描かれる技法も、魅力的。野生動物の親子のあたたかな物語です。
編集長のおすすめポイントは……

「ホッキョクグマのこと、もっと知りたいな」
自分たちの住む家からは、はるか遠い場所で暮らしているプック。けれど、初めての外の世界にはしゃいでいたり、おかあさんの真似ばかりしていたり、迷子になって心細い思いをしている姿に、なんだか親近感を覚えてしまう子どもたちも多いことでしょう。「ホッキョクグマのこと、もっと知りたいな」、そう思ったら巻末の解説も読んでみてくださいね。ホッキョクグマやすべての生きものたちが、この地球でかわらずにずっと生きつづけられますように……そんな作者の思いとも重なっていくはずです。

磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。