『後宮の烏』白川紺子が送る中華怪奇ミステリ『龍女の嫁入り』。「龍女」と病弱な青年のコンビが霊に立ち向かう!
PR 公開日:2024/12/14

人が結婚に夢を見るのは、生涯をともに歩んでいける理解者と出会いたいからではないだろうか。何があってもこの人は味方でいてくれる、自分は一人じゃないのだと思える安心感が得られれば、その人がいない場所でも強く胸を張って生きていられる。『後宮の烏』のアニメ化で話題の白川紺子さんの最新作『龍女の嫁入り』(集英社)は、人であり龍でもある娘・小寧と豪商の息子で病弱な青年・琬圭の出会いを通じて、そんな結婚の理想を描き出してくれる。
琬圭は、成都(中国の大都市)随一の高級旅館・張家楼の主である。虚弱体質ゆえに幼い頃から何度も生死の境をさまよっている彼が、いよいよだめかと思われた23歳のある日、助けてくれたのは道端で偶然出会った道士だった。治療としてある鱗を飲まされたのをきっかけに、琬圭は道士の娘で龍王の血を引く小寧と結婚することになるのだが、「具合が悪ければ人の生き血でつくった酒を飲めばよくなる」と言う姉をもつ彼女。琬圭とは育った環境はおろか、常識と思っているすべてが違う。
見た目は15~16歳だが、人間のしきたりをまるで知らない無邪気な彼女は、幼女のようでもあるし、いきなり結婚させられた彼女を案じてかいがいしく世話をやく琬圭は、父親のようでもある。あまり夫婦感のない二人なのだが、なぜか琬圭に見えるようになった幽鬼(死者の霊)にまつわる事件を通じて、少しずつ心の距離を縮めていく。
理不尽な死を迎えた幽鬼にうっかり同情すれば、こちらの命もとられかねない。でも、だからといって放っておけないのが、琬圭の人の好さ。第三話「くくり鬼」では、ある男が夜な夜な自分が首をくくる夢を見る、というのが事の発端。小寧いわくそれは「縊鬼(いき)」の仕業で、話をするのも危険だというのだが、まんまと問題に介入して琬圭は縊鬼を呼び寄せてしまう。その正体に迫るうち、悪意や殺意の入り混じる暗い情のもつれにたどりつくのだが、そうなると本当におそろしいのは生者なのか死者なのか、わからなくなってしまう。
それでも、琬圭は他者に手を差し伸べることを諦めたりしない。そんな彼に呆れながら手助けすることを繰り返すうち、小寧もまた、琬圭の優しさに救われていく。人にも龍にもなりきれない半端な身の上から、どこにも居場所を見つけられずにいた彼女に、琬圭がくれた「どちらの力も併せ持つということなのだ」という発想の転換。劣等感が強みに変わったとき、彼女は一歩、前に踏み出す力を得るのだ。
同じように孤独を抱えて生きてきた琬圭もまた、小寧がそばにいてくれることで――“帰る”場所を得ることで、自分が成すべきことを成そうという強さを得る。一人ではなく、二人になれたからこそ自立できる。自分の足で立つから、互いを支えあえる。いわゆる恋のときめきとは違うけれど、唯一無二の絆を育んでいく二人の姿に、ぐっとくる。
この先の二人もずっと見守っていたいし、ゴーストバスターズの名コンビとして活躍する姿も見たい。ぜひとも、シリーズ化を希望する。
文=立花もも